【第37回】 手の内の締め(ゲンコツ)

合気道の技を掛けるとき、手の内の締めが大切である。締めが弱いと、技が効かないし、最後に抑えて収めても相手に返されたり、逃げられてしまう。また、しっかり締まっていないと当身などで当てとき指を怪我したり、手首をくじいてしまう。

手の内の締めは小指と薬指それに親指に力を集中(力を出す)し、肩を抜き、腹と結んで手の内を操作しなければならないが、手の内そのものがしっかり締まらなければ、効果はそれなりにしか出ない。

手の内の締めをしっかりするには、指先の4つの指関節が各90度以内の角度に曲がるように柔らかくするといい。特に、最先端にある関節(遠位指節間関節)を鋭角にするのは容易ではないが、少しずつほぐしていくことである。他方の手を使って鋭角になるように押したり、伸ばしたりすればいい。しかし、困ったことに力がついてくるとそれにつれて指関節が硬くなるので、ここを柔軟に保ち続けるのは難しい。

手の内を締める鍛錬法の一つに腕立て伏せがある。ただし、床に着くのは手のひらではなく、拳固をつくってたときの指の二番目の関節(近遠位指節間関節)の突端である。ここはじかにこの骨があたるので、はじめは畳のような柔らかい床でも大きな痛みを感じるだろう。この腕立てが板床でできるようになれば、相当に手の内が締まってくる。

しかし、はじめからこの腕立て伏せは痛くてできないだろう。無理をしないでこれが出来るようになる方法の一つは、まずは、風呂稽古である。水の浮力を利用して、風呂の中でこの部分を風呂桶の底に着けて屈伸する。この関節部が強くなってきたら、畳で腕立て伏せをやってみる。もしまだできなければ膝をついてやればいい。膝をついてできてから、通常の形でやればよい。畳ができたら、板床でやるようにすればいい。ただ、注意しなければならないのは、この稽古を2−3日休むと、またもとに戻ってしまい、また、痛みを覚えるようになるので、少しずつでも毎日稽古し続けなければならないことである。