【第364回】 回旋可動と軸

合気道の技は、円の動きの巡り合わせであるから、体を円く動かしてつかわなければならない。体を円くつかうとは、体を回旋と回転でつかうことである。回旋も回転も仮につけた名前だが、回旋は体軸を中心にまわること、腕の場合なら、指先から肩までの軸が中心でまわることである。これを縦の円とすると、この円の動きに対した円の動きが回転であり、横の円ということになる。

今回は、この縦の円である回旋で体をつかうことを見てみたいと思う。この縦に対して、十字に動く円い動きである回転は、別の機会にする。また、腕の回旋と回転は、以前に書いてある。

立った状態を頭の上からみると、体軸を中心に左右または内外にまわすのが回旋であるが、回旋する主な個所は、足首、膝、股関節、腰、首などであろう。人の体はフクロウの首のようにぐるっと回旋することはなく、このような個所が可動範囲で回旋し、円い動きができると考える。

足首では足首の上の下腿、膝では大腿、股関節では体幹、腰では上半身、首では頭が、内外に回旋する。

合気道の技をつかう時には、この回旋が不十分だと、技はうまくかからないものである。典型的な例として、正面打ち入身投げや一教裏で、最後のところで相手にぶつかってしまったり、相手に頑張られてしまうのは、この回旋、特に、腰の回旋が不十分なためである。

正面打ち一教では、下腿、大腿、股関節、腰、等が順次外旋しなければならない。腰の回旋で、つまり、腰の円の動きが不十分なのである。この腰が十分回旋することによって、相手が円く前に導かれて出てきて、十字になるのである。腰の旋回が十分でない場合は、相手と十字にならず平行に並んでしまうことになるので、ぶつかり合って争いになってしまうのである。

しかし、回旋は容易ではない。それは、まず回旋の重要性に気付かないこと、そして、回旋させるためには、一つの法則があるからである。その法則とは、回旋させる部位を回旋するためには、回旋させる下の部位に気持ちを入れ(意識する)、そして重力を加え、そこを支点として動かさず、その上にある部位を回旋するのである。

回旋したいところを初めに動かそうとしても、動かないはずだ。足首、膝、股関節、腰、首などの各関節でロックされているので、そのロックを外さなければならない。そのロックを外し、しっかりした支点をつくらなければならないのである。

ロックを外さないでやれば、体をひねることになり、痛めることにもなる。膝が痛いとか、腰が痛いというのは、これも原因となっているはずである。また、支点をしっかりさせていないと、力も出ないし、無理して体をいためることになる。

円の動きからできる技を練磨するわけだが、縦の回旋の可動領域を広げることも大事な稽古であろう。