【第360回】 技は円の動きの巡り合わせ

合気道の技は宇宙の条理・法則を形にしたものであるから、つかう技には法則がなければならないことになる。宇宙とは、人類が今でも掴みきれないほど広大無辺であり、また、時間的にもこれまでの137億年に加え、先の時間を加えれば、無限ともいえる長さがあるわけだから、宇宙の営みの法則は無限にあるはずである。それ故、人がそのすべての法則を見つけるのは不可能であるし、そのすべてを合気の技に取り入れていくのも不可能であろう。できることは、一つでも多くの法則を見つけ、技に取り入れ、身につけていくことになるだろう。

開祖は、宇宙にある一切の万有万物を気結び生産びの形にて生成化育し、守護の仕組みを生じさせるのが円であるから、合気道の技も円の動きの巡り合わせでなければならない、といわれている。

確かに、自分の円の動きの中に相手を入れてしまえば、相手と結んで合気になるが、そうでなければ、相手と結ばず、争いになって、合気にならないものだ。

人の円の動きにはたくさんある。その複数の円の動きの組み合わせが技になるわけだが、まずどんな円があるのかを見てみたいと思う。

人の体での円の動きには、二種類ある。縦の円と横の円である。縦の円は回旋、横の円は回転というようだ。手で言えば、手を前に出して回旋したものが縦の円で、手先を手首、肘、肩先中心に回転するのが横の円である。

円の動きができるところは関節部であり、最もつかうところは腕と腰であろう。手の場合は、手首、肘、肩、胸鎖関節で縦の円と横の円で動くし、腰も縦の円でかなり自由に動く。首もけっこう自由に回る。また胸も、首や腰のようには動かないが、身柱のツボのあたりに息を入れて肩甲骨を通して、息に合わせて技をつかうと、円く動き強力な呼吸力が出てくる。

この胸の動きをつかえなければ、胸取りを処理することはできないので、胸の円の動きも重要である。

つまり、関節部で大小の差はあるが、縦と横の十字で、回旋と回転で動けるということである。

技は少しでも多くの円の動きで構成されなければならないはずだから、首、胸、腰腹でさえ横の円の動きでつかわなければならない。そのために、そこの関節部を縦横の円で動けるように鍛えていかなければならないが、他の部位との連携も必要である。

それは、脚の動きに助けてもらうことである。左右の脚が左右規則正しく動き、その上に首、胸、腰腹がのれば、横に動くことになるが、それは円の動きになっているはずである。

三角法で進む脚により、首、胸、腰腹だけでなく、肩や手等体の先端は円の動きになるし、ならなければならない。△が〇になるわけである。  

技はこのように多くの体の部位の円からなり、またそこでの縦と横の円の動きの組み合わせでできていることになる。まったく複雑怪奇である。

しかし、円の動きの巡り合わせはこれだけではない。目に見えない心と息も円くつかわなければならない。「心を円く体三面に開く」といわれるように、心も円く使わなければならないし、息も円くつかわなければならないのである。

そうすると、体の部位の縦横の円の動きと、心と息の円の動きが、巡り合わなければならないことになる。

だが、開祖がいわれている「技は円の動きの巡り合わせ」は、さらに深い意味があると考える。それは、最初に書いたように、宇宙の万有万物を生成化育している宇宙の円の動きとの巡り合わせである。天の気、天地の呼吸の円の動きに合わせるのである。先はまだ遠い。

合気道は技の練磨であるが、このようなことが練磨ということになるのだろう。気持ちを入れなおして、稽古に励まなければならない。