【第291回】 腰に足を結ぶ

腰は体の要(かなめ)(かなめ)であり、力を出すにも、力を受けるにも、腰を使う。だから、体の末端と腰は繋がっていなければならないし、途切れることなく常に結び合っていなければならない。

前回の第291回では、「腰に手を結ぶ」をテーマに、手と腰は結び合って使われなければならないということと、では、手と腰を繋げるにはどのような稽古をすればよいのかを書いた。

今回は、前回に関連して、「腰に足を結ぶ」というテーマで書いてみる。

手が腰と結んで使われていないと、技は効かないが、同じく末端にある足も、要の腰と結んで使われなければ、技にはならない。足と腰が結ばれず、足だけがバタバタ動いては、技にならない。しかし、足と腰を結んで動くのは、手と腰を結ぶよりも難しいだろう。

先ず、足と腰を結ぶとはどういうことなのか、結ばなければどうなるのかを見てみよう。

足が腰に結ばれると、まず着地した時の足にかかる体重が腰におさまり、次に、腰に集まった体重を、足に落とすことができるようになる。つまり、着地したときに、体重が腰にのらなかったり、全体重が着地足にのってないようなら、足と腰は結ばれてないことになる。

次に、足と腰を結ぶにはどうすればよいかを見てみよう。

先ず、足は武道の基本的な規則で使われなければならない。例えば、ナンバ、撞木足、陰陽交互、腰から先に動き足が腰について行く等などである。

次に、足は体の表(モモ側)に力を通してつかわなければならない。体の裏(膝側)に力を通すと、足からの力は腰に集まらず、腹や膝に集まってしまう。

三つ目は、体重が体の表側を通るように、着地は踵からする。

四つ目は、足と腰の結びを切らずに歩を進めるために、着地した踵から小指球、そして拇指球と、足底をアオルことである。アオリがなければ、撞木での方向転換がスムーズにいかないし、足が水平にスムーズに動かず、とちゅうで足が上下することになるので、足と腰の結びが切れて、ドタドタする足遣いになる。

五つ目は、手と同様に、足の指を伸ばして、足底を平らに伸ばすことである。足底が平らになると、手と同じように、足と腰が結ばれる。足の指が縮んでいると、足と腰は結ばれず、力は体の裏(前面)に集まってしまうはずである。そうなると、膝に負荷がかかって膝を痛めやすくなるし、そこから腰椎にも影響がいき、腰を痛めることになると思われる。

腰と足が結ばれているような稽古をしていけば、次第に腰ができてくるはずである。腰ができるとは、腰から力が出入りすることと、腰が発達することだろう。腰を上から触ってみると分かるが、稽古していくと、そこに筋肉がついてくる。筋肉がついてくると、重心が下り、体の動きが上下することなく、切れずにスムーズに動けて、相手と接している接点や自分の足の足底に全体重をかけられるようになる。

手が腰に結ばれ、さらに足が腰に結ばれれば、手と足が結ばれて繋がることになる。要の腰で繋がった手と足を使っていくと、手と足と腰の三位一体で、よい仕事ができることになる。

腰で手足を動かし、手足からの力を腰に集める稽古をしていくと、腰は発達していく。腰が発達すれば、手足がさらによく動くことになる。その相乗効果が手足と腰に出るようになれば、正しい道の稽古に入ったといえるだろう。