【第29回】 手首の鍛え

合気道には二教や三教の関節技がある。関節技は関節に溜まっているカスをとるもので、そこを壊したり痛めたりするものではないといわれる。しかし、合気の体がどれだけできているか見るには、二教を掛けてみると分かるようだ。何故なら、手首は体のなかで最も弱い部分の一つであるので、ここがどれだけ強いかによって、他の体の出来具合を計るのに手っ取り早いのである。

この二教は稽古時間によくやる基本技であるが、相手の力が弱かったり、遠慮されたるすることもあるので、通常の稽古では限界ぎりぎりまで鍛えられたり伸ばされたりすることはない。手首を鍛えたいと思えば、自主稽古しかないだろう。

まず、同じぐらいのレベルのよく知っている人と組んで、二教を思い切り掛け合う。右を10回やったら左10回。今度は相手にやらせて受けをとる。
さらに、両手首を同時に二教で決め合う稽古もいい。二人に同時に掛けられると痛くても参ったと手で合図できないから、片方の手のときより大変である。

また、だんだんお互いに効かなくなってきたら稽古用の木の短刀を使って鍛え合うのもいい。3ヶ月も一生懸命やれば、しっかりした手首ができるだろう。

相手がいなくとも、一人で手首を鍛えることができる。まず、手の甲を畳や床につけ、腕立て伏せをし手首を鍛える。手の甲をつけて、指先を内側に向けるのと外側にする2通りがある。次に、二教で押さえられる形の手首で縦にした杖を逆手に握り、肘を下げながら手首を自分の中心に引きつけて手首を鍛える。

また、杖を左右八の字に返し手首を鍛えることもできる。このとき注意するのは、杖が常に自分の正面にあるようにすることである。このためには腰で回さなければならない。

二教で手首がしっかりしてきたら、二教には掛かりにくくなるだろう。頑張れば全然効かなくなることもあるだろう。しかし、そこで頑張って俺は強いと思ったら稽古にならない。二教も自分の手首のカスをとることであることを忘れず、どんな初心者や力が弱いひとの二教でも、カスが取れる受けを取らなければ自分の稽古にならない。手首が強くなれば、今度は弱くなる稽古が必要になる。稽古には段階があり、段階ごとにやり方がかわり、そして終わりがない。