【第271回】 指関節

合気道の面白さのひとつは、自分の体を知り、体をいかに遣えばよいかを、限りなく追求していくことであろう。

合気道は、技の練磨を通して精進していく道であるが、技の上達も大事である。上達があるから、さらなる精進を目指す励みになるからであるし、もし長年やっても上達しなければ、今後も上達の可能性がないと思い、稽古をやめることにもなるだろう。

上達は誰でも願っているはずだが、思うように上達しないものだ。上達するためには、上達しようと希望するだけでなく、やるべきことをやっていかなければならない。

しかも、やるべきことは沢山ある。というより無限にあるようである。それをひとつひとつ見つけて、身につけていかなければならないのである。努力と忍耐もいる。

技を練磨し、上達するためには、自分の体を最大限に鍛え、活用しなければならない。使いやすいところ、使いなれているところだけを使っても限界がある。

今まで使っていなかったところを見つけて鍛え、動き難い部分をよく動くようにし、重要な部位をさらに鍛え、そしてそれを使っていくことが、上達のためには必須である。

日常生活では、手の指関節に力を込めて使う事はあまりないだろう。しかし、合気道の稽古では、この指関節がしっかりとしていなければ、いい技はできないし、上達が止まることになる。

合気道は武道であるわけだから、技をきちんと掛けなければならないし、相手を押さえたら、相手に逃げられないように、しっかり抑えなければならない。そのためのポイントのひとつが指関節である。それではどうなればよいのか、一言で言えば、指に力を集中させることである。

指に力を集中させるということは、指の三か所の関節を十分に折り曲げて、握りこみ、そこに腹の力を集中するということになろう。

そのためには二つのことに注意して鍛錬なければならない。
一つは、各指の関節がそれぞれ鋭角(90度以内)に折れ曲がるように鍛えなければならない。
二つ目は、腹と指を結んで、腹からの圧の力で握り込まなくてはならない。

関節を鋭角になるよう、また、腹の力が指先に集中するように鍛えるためには、相対稽古の一教腕抑えで、指先に力を集中して、力一杯抑えて稽古をすることである。ただ触っただけで抑えるような稽古は、名人にでもなってからにすればよい。

それでも指関節は中々鋭角にならないだろうから、自分でそうなるように鍛えなければならない。各指の関節をひとつひとつ鋭角に折れ曲がるように、反対側の親指を使って抑え、柔軟にしていくのである。(写真) ただし、このとき大事なのは、息遣いである。

初めから息を吐いて親指に力を入れると、痛いし、曲がるべく関節が硬直してしまう。まず、息を吸いながら、親指に力を入れていくことである。そうすると、押さえる親指と曲がっていく関節部が結ばれて、仲良くひとつになる。そこで息を吐きながら、親指に力を強目に加えて抑えれば、あまり痛く感じないで押さえることができる。

ここでひとつ大事なのは、鋭角に曲げる鍛錬をしたら、今度は曲げた指を反対の手の親指と人差し指の間にはさんで、一本々々伸ばすことである。これも息を吸い、それから吐く息遣いで行わなければならない。

鋭角にどれだけ近づくかは知らないが、後で関節が柔らかくなり、気持はよくなるはずだ。