【第26回】 ナンバ歩法

武術や武道の歩法の基本はナンバだといわれる。近年、スポーツでも陸上のスピード走法やバスケットなどにも取り入れられ、成果をあげていると聞く。 明治以降、今の歩法は、所謂、西洋歩きとなり、武術が出来た時代のナンバ歩法から変わってしまった。

ナンバ歩法とは,足を1歩前へ出すと同時に左右同じ方の腰と肩を前に進める。下半身の動きと上体が同じ動きをし,体重を着地する足に真上から乗せ、この体重移動を利用して歩くのである。この際、腰を落とし、骨盤を倒さなければならない。ただ実際は上体を脱力して、肩は常に進行方向に対し平行で、肩や腕は振らず進む歩法である。

若い内は西洋歩法でもパワーと体力で稽古していけるが、年を取ってくると、これではパワーも上手く使えなくなり、そして腰をどうしても捻るため、腰を痛めることになってしまう。

しかしながら、このナンバ歩法がいいと思ってやろうとしても、これまで何十年もやってきた西洋歩法を変えるのは、そうたやすいことではない。道場の稽古でナンバの歩法に変えてやろうとしても難しい。道場ではナンバ歩行など教えてくれないだろう。それ故、日常の歩行から変えなければならない。ナンバで歩く練習を、普段歩くとき、意識してやることだ。はじめは幼稚園児かヤクザのような歩き方になるだろう。すこし格好がつくまで、少なくとも一年ぐらいはかかるだろう。

もう一つのナンバ歩法の練習に山歩きがある。急斜面の上り下りや、疲れてくると自然にナンバにならざるを得なくなる。この感覚を身につけるのである。 特に、1本歯で山歩きをすると、ナンバで歩かないと絶対に歩けない。西洋歩きでは、靴では歩けるが、1本歯では滑ったり、転んだりしてしまうのである。蛇足ながら、1本歯で山を上り下りするときは、ナンバ歩法のほかに、斜めに進む、所謂、「忍者歩き」が要求される。特に、細い道は、この斜め歩きでしか進めないのである。

ナンバ歩行をしなくとも合気道の稽古はできる。無理してナンバに変えなくてもいいかもしれない。しかし、問題は体を壊してしまう危険性があることである。腰を捻るので腰を痛めてしまうのである。
ナンバ歩法を研究して、これで稽古をやってみてはどうだろう。