【第229回】 足

合気道で技を掛けるとき、技は足で掛けるとも言われるように、足は非常に重要である。しかし、初心者は手だけで精いっぱいで、足にまで注意がはらえなくて手捌きになり、手で技をこねくり回してしまう。足を上手に遣えなければ、技は上手く極まらないはずである。
しかし足を遣うといっても、足で相手を蹴ったり、足を掛けたりするのではない。そのような足技は合気道にはないし、厳禁である。足技は無礼であると開祖は戒められていた。

ここで足というのは、下肢ということである。足は、足首から下の「足」、足首と膝までの「下腿」、膝から股関節までの「大腿」から構成されており、足首から下の「足」は、指先、拇し・小し球、踵や多くの関節と腱や筋肉から出来ている。従って、「足」と一言でいってもそう単純ではない。

また、足は、足首のところと膝のところ、そして腰のところで折れ曲がる。椅子に座ってみればよくわかるが、その三か所とも直角(以上)になる。手と同じように、足も十字で機能するようにできていることになる。

合気道の技の稽古において、足の主要な役割は、体を支えること、移動することであろう。技を効かせるためには、この足の両方の機能を最大限に遣わなければならないはずである。もし、足が体を支えているだけで、体を移動していなければ、「山田の中の一本足のかかし」と同じで、後は動かすことのできる手を遣うしかなくなる。これでは、大した力は遣えないから技にならない。

初心者の技が上手く掛からない原因のひとつは、手よりも足にあるようだ。まず、足が動いていないことである。武道で忌み嫌われる、いわゆる「居着く」ことになる。「居着く」と、「かかし」になる。

次に、足と手がバラバラに遣われていることである。足が陽の手と同じ側の手と一緒に、つまり筆者のいうところの「なんば」で遣われていないことになる。

三つ目は、足の進め方である。両足を平行に動かしているので、相手とぶつかってしまうので、技にならないのである。
足は撞木で、半身々々で進めなければならない。人が通常歩いているように、両足が平行に進むのでは駄目である。前足の踵は、後足の中間である土踏まずに向いていなければならない。

四つ目は、重心の移動である。武道では自分の体重を技にしなければならないといわれるので、相手との接点に如何に自分の体重を懸けるかが重要である。足先が膝より前に出ないように足を進め、進めた足の真上から体重が載るようにしないと、体重は分散して小さな力となってしまう。そうならないためには、股関節が柔軟でなければならない。股関節が硬いと、足の真上にのらず、重心が一軸にならないので、体重は両足の間に落ちてしまい、力が左右の足とその間の3つに分散した三軸になってしまうのである。

五つ目は、拍子である。途中で足が止まるのは問題外だが、左右交互に規則正しく動かないのも駄目である。自然な足運びでなければならない。技を掛けるときの足運びは、「歩くように」と言われるのである。

初めは誰でも手に注意して稽古をするものだが、足にも注意を移して、技の鍛錬をすべきである。しかし、足は手より難しいものだ。手は頭で考えて遣ったり修正できるが、足は頭ではなかなか言うことを聞いてくれない。足との対話でやるほかないようだ。