【第220回】 体も十字に遣う

合気道は十字道ともいわれるように、合気道の技は十字で掛けるように出来ているし、そのため体も十字に遣わなければならないことになる。合気道の技は宇宙の営みを形にしたものであると言われているし、宇宙の営みの下で創られた人の体も、螺旋で機能するよう十字で遣わなければならないはずである。

人の体は、前にも書いたように、十字で構成されているといえよう。踵を揃えて立った姿勢を上から見れば、両肩の横の線とそして背・腹と踵・爪先の縦の線は十字になっている。手も、手首と肘、肘と上腕、上腕と肩が十字で機能し合うように出来ている。

十字に機能するということは円になり、螺旋になるということである。円に十のである。手首を横、縦、横、縦・・・と動かしていけば○(円)になる。
ただの○(円)では技にならない。宇宙には、球があっても、ただの○(円)というものはないはずである。○(円)は螺旋でなければならないはずである。
○(円)が螺旋になるためには、○(円)が中心を持っていることと、回りながら上下、または左右に動くことが必要であろう。

この十字の動きが○(円)となり螺旋にならなければならいことがよく分かる技に「天地投げ」がある。「天地投げ」は、技の形をなぞったり、または相手が受けを取ってくれれば、初心者でも容易にできる技であるが、相手に少しでも頑張られると、相手が倒れず、なかなか難しい技でもある。手足と体を陰陽に遣えないとか、入身と転換が出来なければ、そのレベルでしか出来ないわけであるが、それ以外にも、体を十字に遣わなければ出来ないものである。

一番問題になるところは、自分の腕が相手の首にぶつかってしまい、相手と争い、相手を倒すことが出来ないことであろう。これは縦横十字の遣い方の順序を間違っているからといえよう。

「天地投げ」の十字の体の遣い方は、

  1. 足とともに、前(横=水平方向)に手を出し、相手に掴ませて、相手とむすぶ
  2. 反対側の手と足を相手の側面に入身し、手を下(縦)に下ろし、気持と体重を下(縦)に落とす
  3. 地からの抗力と一緒に上に上がりながら、体を転換(横)する
    地の足から地の力が他方の手に伝わってくるので、その手を上(縦)に上げる。このとき腰が横に回転しているので、手は螺旋になる
    初心者は、入身になって腰を回転させず、また手を縦ではなく横に遣うので、うまくいかないことになる。
  4. 縦に遣ったので、今度はこの手を横に遣うことになる。遣えるのは前腕と上腕で十字(直角)になっている上腕である。この上腕を横に足を進めながら遣えば、肘が相手の首に当たるが、危ないので相手の肩や胸に少し当てるようにすればよい。
  5. 次に、その相手に当たった肘を中心にして、前腕を下(縦)に落とす
他の技でも、体を十字に遣っていかなければ、上手くいかないはずである。もし技が上手くいかないところがあれば、縦と横の体の遣い方が逆かもしれないので、縦で失敗したなら横に遣ってみるとよいだろう。