【第213回】 歩法
すべての習い事において、歩法は大事である。武術の世界でも、「継足」「送足」「無足之法」「浮足」「すり足」「猫足」・・・等など、歩く方法を重視し、伝承してきている。
合気道では、歩法のことを運足法(はこびあしほう)といい、その基本を「継足(つぎあし)」「歩足(あゆみあし)」「転回足」「転換足」としている。
合気道の技は足で掛けるといってよいほど、足遣いは重要である。つまり、歩法がまずければ、「継足」「歩足」「転回足」「転換足」も遣えないし、技も効かないわけでる。
そこで技が上手く効くための足遣いである歩法(運足法)で、何が基本的に大事なのかを考えてみたいと思う。
- 先ず、ナンバでなければならない。武道や武術は、ナンバの体と手足を遣うことを前提にしたものであるはずであるので、それを踏襲しなければならないはずである。西洋式の歩法で技を遣えば、西洋的な力でやらなければならない。
- 半身から半身で歩を進める。半身でお腹を正面に向ける姿勢「真向かい(まむかい)」とか、相手に対して完全に横向きになる「一重身(ひとえみ)」にならずに、相手に正対しながらも片側の肩を引いた状態「半身」を崩さずに歩を進める。
- 足は撞木(しゅもく)で進める。前足の踵の延長線が、後ろ足の中間にある土踏まずに向かう足の運びである。間合いや技により角度を変えていくが、撞木を維持しなければならない。
- 合気道は手で技を掛けるが、手先だけの力など弱いので、全身の力、つまり自分の体重を最大限に遣う必要がある。そのため自分の体が倒れこむ力を利用しなければならないので、ナンバの着地足に体重を載せながら移動する歩法である。ナンバでなかったり、地を蹴っての歩法では全身の力は遣えない。
この地を蹴らずに歩む歩法を「無足之歩法」ともいうようだ。
- 地の引力に逆らわない歩法で、体が地にめり込むように歩を進める。引力に逆らうと、バタバタ、ドタドタの足遣いになり、武道の歩法ではない。
体が引力に逆らわずに、地に接するようになると、今度は逆に、体重を感じなくなり、体が浮いている感じがもてるようになる。これを「浮身(うきみ)」ともいうようだ。
この「浮身」ができると、自分の身を重くも、軽くもできるようになる。
「浮身」は、相手の手を抑えたり、打ちにいく攻撃のときに、稽古するとよいだろう。武道であるから、本来は相手に悟られないように、素早く相手を抑え込んだり、捕まえるわけで、ドタドタ、ノロノロ取りにいくのではなく、迅速にいかなければならないはずである。
先輩からは、「足に目をつける」ようにせよと教わったものだ。足に目をつけて、そして身を重くしたり軽くしたり、早くも遅くも自由自在に足を運べるよう、歩法を研究し、身につけなければならないだろう。
参考文献 『合気道技法』 (植芝盛平監修 植芝吉祥丸著)(光和堂)
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