【第168回】 手関節の回転

合気道の技は手で掛ける。手を取りに来ようが、打って来ようが、攻撃相手を手で制する。しかし、攻撃相手を制するのは容易ではない。制するためには、技を遣うためのいろいろな条件があるからである。その内の重要なものの一つに、手を反転々々して遣うといことがある。

手が反転するのは、手の平が反転するのであるが、実際には小手、上腕、肩甲骨のすべての手の部位が回転したり動いたりしている。つまり、手の平を上手く回転させるためには、他の手の関節も十分に回転するようにしなければならないことになる。

手は指先から胸鎖関節までをいうが、この中に回転することが出来る関節部が片方で9か所ある。指の付け根のところで回転する5本の指、手首、肘、肩、胸鎖関節である。この部位を十分に回転するようにしなければならない。どこか一か所でも回転しなければ、手全体としての反転々々はスムースにいかず、技が効きにくいことになる。

十分回転できないのは、その部位が十字に働かないからである。手の各部位は上下か左右のどちらかに機能しやすいようにできているので、まず動く方の可動範囲を広げるようにし、さらに機能し難い方向に少しでも動くように鍛練し、縦横十字に機能するようにすれば、きれいな円で回転出来るようになるはずである。

合気道の技はそれが出来るようにつくられているので、注意して鍛錬すれば、手の各部がきれいに回転するようになるし、手を反転しながら回転するようになるはずである。

しかしながら、相対稽古ではどうしても相手に気持ちが行ってしまったり、囚われたりするので、手の回転の稽古は難しい。だから、基本準備運動の中にこの稽古を取り入れるとか、自主稽古でこの手関節の回転の練習をするのがよいだろう。

五本の指も指の付け根のところで回転するが、今の合気道では指を遣って技を掛けることはないようなので、省いてよいだろう。従って鍛錬するのは手首、肘、肩、胸鎖関節を支点としての回転運動ということになる。各部位を十字に動かすと、円運動を描く。円に十の字ということである。

手首、肘、肩の付け根、胸鎖関節は支点として動かさず、出来るだけ大きな円を描くようにするが、ここで重要なことは、どの手の部位でも円を描きながら手の平が反転々々(手の平と甲が交互になる)回転しなければならないことである。この反転がないと筋を痛めるし、技を遣うための基本準備運動にはならない。ちなみに体の捻転でも首の捻転でも、ただ回すのではなく、反転々々で回転しなければならないことになる。