【第9回】 股関節(こかんせつ)

合気道の稽古をすると、体力がついてくる。体力をつけるのが主目的ではないが、稽古をしていれば自然につくものである。
体力とはなにかというと、筋力、心肺機能、柔軟性、バランス感覚などの総合力である。合気道の稽古をしていると、これらが改善されるわけである。稽古で打ってきたり、掴んでくる相手を制するため、筋力はつくし、普段の生活のペースより早いテンポで技をかけたり受けをとるため、心臓や肺も強化され、筋肉や関節を張ったり緩めたりするから柔軟性も促進されるし、技をかけるにも受けをとるにもバランス感覚が必要なので、これも改善されることになる。

だが、股関節が硬いと技がなかなか効かない。股関節を柔軟にすることは大切である。股関節を柔らかくするには、稽古のときに意識して使うことである。股関節の鍛錬は、意識すればどの技でもできるであろうが、特に股関節にいい技は座技呼吸法、一教、片手・諸手取り呼吸法などである。
一人で稽古するには、開祖もやっていた稽古法がある:
1.正座する
2.手の平を上に向け、手の甲をヒザの上に置き
3.体を左右に倒す
4.倒しながら、へそが倒した側のヒザに近づくようにする


骨盤と大腿骨が分離して動くようにするのがポイントである。ここが硬いと、骨盤と大腿骨がくっついて、つっぱってしまう。開祖は非常に柔軟に、早いテンポで、ヒョイヒョイとされていた。

立ち技でも、へそがどちらかの足の踵の真上にくるように股関節を使う。へそが両足の真中にあると動き難いし、自分の体重と引力の力が十分使えない。
開祖がご健在だった頃は、座り技の稽古が多かった。自主稽古でも座り技を稽古していれば開祖はなにも言われなかったが、立ち技で稽古をしているとよく叱られたので、開祖がいらっしゃるようなときは座り技の稽古にしたものだった。座り技は合気道の体をつくるためであり、特に股関節を鍛えるうえで大切だとの教えであったと思う。

日常生活においても股関節は鍛えられる。特に、階段の上り下りはいい稽古になる。故有川師範の階段の上り下りはナンバで特長ある歩き方をされていたが、股関節を鍛えるのに適した歩き方だったように思える。

一般的に、股関節が硬いと、腰や膝に違和感や痛みがでたり、高血圧になりやすくなり、お腹に脂肪がつき、疲れやすくなるといわれる。日常生活を健康に過ごすためにも、股関節が柔軟になるように鍛えるのは大切である。