【第7回】 関節や体の部分を伸ばす

稽古のはじめによくやる体を慣らす準備運動には、手首、肘、肩、首、脇、脚、足首などを伸ばす運動がある。これらは技ではないが、技と同じくらい重要な合気道の原理を持っている。この原理には、二つの点がある。

一つは陰陽である。例えば手首を鍛える準備運動では、押さえている手は押さえられている手首に十分圧力を加えるが、押さえられている手首も押さえている手に対して相応の圧力を加える。手首の接点では双方の相当な力がぶつかり合うことになるが、接点がゼロになり、陰陽のバランスがとれて、手が体の中心にくるはずだ。後は、左右からの力を加えながら肘を落とせば、ますます手首が伸びる。

二つ目は息の使い方である。上記の手首を返す運動の場合、手首を伸ばすのが目的なので息は吸う。吸うといっても肺で吸うのではなく、腹を開くのである。その結果息が腹に入っていくので吸うことになる。息を吐いてやれば一般的に体は硬くなる。

簡単に試せる例として、首の運動をあげてみよう。首を前後に伸ばす運動で息を吐きながら伸ばすのと、息を吸いながら伸ばすのと、両方やって比べるとその違いが分かるだろう。息を吐いてやると途中でひっかかるのに、吸いながらやると驚くほど伸びるのである。

このような息の使い方は、他の関節や体の部分を伸ばすときも同じであるし、技をかける場合も、この息の使い方をすれば技がかかりやすくなる。例えば、二教の裏で相手の手首を返すときはこの息の使い方をすると相手を吸収して一つになりやすい。二教裏を息を吐きながらかけてみると、よほど力の差がないとぶつかって争うことになるのである。

準備運動とはいえ、ゆめゆめ疎かにすべきではない。各部位が少しでも伸びるように、気持ちと力を入れてゆっくりと大事に大事にやるべきである。