【第4回】 柔軟な手首

手の甲を上にしたまま上下に動かすのは容易であるが、そのまま左右に動かすのは難しい。だが、この動きが悪いと技がかけ難い。特に、正面打ち一教の技の時、相手の手首に接し相手全体をとらえようとする瞬間や(写真1)、その後その手を滑らせて相手の手首を引っ掛けて押さえる瞬間(写真2)、あるいは入り身投げで相手の手首を引っ掛けて切り下ろす瞬間など、手首が硬いと上手くいき難い。

この手首の鍛錬をするための稽古法として、ご参考までに元本部道場師範であった故有川師範の稽古プログラムとコメントを紹介しておこう。前にも言及したが、師範の稽古には毎時間テーマがあり、テーマが何か分からなければ、その時間の稽古の意味は半減することになる。師範はあまり口では説明されなかったので、意図されることを自分で想像するしかなかった。それを記録しておいたので以下に引用する。

師範は道場の稽古の初めに、よく手首を横に動かす運動をやって見せ、飲食の席などでも「これができるかやってみろ」と言っておられた。これが如何に大事なことであるかということを、教えていたに相違ない。

【稽古日2001年1月31日】
○ 予備体操:正面打ち、横面打ち、突き各左右
○ 諸手取り呼吸法
 ― 体を動かし、相手の死角に入る
○ 正面打ち一教
 ― 相手に充分入る。
 ― 手首を縦に返し相手をくっつける
 ― ヒジのあて方重要
 ― 相手にくっつけた手を滑らして小指で引っ掛ける
○ 正面打ち入り身投げ
 ― 充分入り身する
 ― 手を落として投げるのではなく小指を引っ掛けて崩す
 ― 手は楕円に使って胸に引き崩す
○ 正面打ち回転投げ
  師範コメント 手で掴まないで引っ掛ける
○ 横面打ち隅落とし
 ― 受けて流すとき、接点をうごかさず小指だけを下ろすと、相手とくっついて崩せる
○ 正面打ち隅落とし
○ 正面打ち太刀取り
○ 呼吸法(座法)