合気道の相対稽古で技を掛け合っていると、技が上手く効いたり、効かなかったりする。初心者など弱い相手には技をどうやっても効くだろうし、強い相手にはなかなか効かないものである。しかし理に適った技を掛けると、相手が倒れないまでも、参ったと思うし、自分も上手くいったと思うものである。その理合の一つに、「十字」に技を掛けるということがある。
合気道の技が上手く決まるときは、ほとんどの場合十字になるといえる。一教から五教、四方投げ、小手返し、入身投げでも十字になっている。但し十字というのは、手とか体幹などからなる物質的な十字ではなく、「気」の十字である。もちろん「気」の十字のところには、体や体の部分が十字の一部の直角を形成する。従って、この直角が気の十字の顕界(みえるところ)の部分であり、気の十字を交流させるところということになる。ここで直角が崩れてしまうと、十字にならず、気が流れないことになるので、技が効かないということになる。
十字にならないと、どの技も上手くかからないが、それが分かる典型的なものに、肘きめ、十字がらみ、腰投げ、回転投げがある。肘ぎめは、相手の肘の処に自分の腕を直角にのせるようにしなければならないし、十字がらみは肘のところで相手の腕を直角に当てなければならない。腰投げは相手の体幹に自分の体幹が直角(十字)になるようにのせなければ技にならない。回転投げは相手の腕が体幹と頭を結んだ線に直角(十字)にならなければ、相手は回転してくれない。