【第569回】  タカアマハラ

合気道の修業の目標は、宇宙との一体化である。開祖はそれを、「合気道の極意は、己を宇宙の動きと調和させ、己を宇宙そのものと一致させることである。合気道の極意を会得した者は、宇宙がその腹中にあり『我は即ち宇宙』なのである。」(「武産合気」P.44)と云われている。

「タカアマハラとは全大宇宙のことであります」(「武産合気」P.48)とあるように、宇宙のことをタカアマハラという。従って、宇宙との一体化とは、タカアマハラとの一体化ということになり、そのためにはタカアマハラの営みを観得し、身に着けていくことになる。

このためにまず、タカアマハラの動きと働きを知らなければならない。
これを開祖は「の対照が生まれる。で内部の光が輝いて来る、で神霊顕彰宇宙全くはりつめる。で全く張りつめて玉となる。またこの極微点の連殊糸(さぬきいと)をなす。次に、神霊元子が活気臨々として活動している気を称して、ハというのです。は活気臨々、至大照々というのです。またその造化器が運行循環しつついる気を称してという、即ち循環運動のことである。」(「武産合気」P.65)と言われている。

タカアマハラは誰もが己には遠い存在であり、自分とはかけ離れた存在のように思っているわけだが、実は非常に己と密接につながっているし、しかもそれは己のうちにあるのである。
開祖は「タカアマハラも自分にあるのであります。天や地をさがしてもタカアマハラはありません。それが自己のうちにあることを悟ることであります。」(「武産合気」P.47)と云われているのである。
従って、自己のうちにこのタカアマハラをつくり上げていけばいいことになる。

合気道の形稽古での技の錬磨をよく考えてみると、確かにこのタカアマハラを自分の内につくり上げようとしているのだということがことわかる。
まず、@相対と対峙することによっての対照が生まれる。A相手に技を掛けようとする心が起こり高揚し、内部の光が輝いてとなる。B隠れていた神霊(気とか魂)が小宇宙の体に張りつめるとなる。Cアで張りつめた神霊が極限まで張りつめ玉となりとなる。Dこの神霊(気)の玉が活気臨々、至大照々となりとなる。(ここで技を掛けることになる)Eそしてこの気が自分の体内と相手と運行循環する気、すなわち気が循環運動してとなるのである。
これが技ということになるわけである。

タカアマハラの営みを、日頃の技稽古でやっているわけであり、やらなければならないことなのである。
それ故、合気道は技を通してタカアマハラを自分の体につくり上げていくことになり、大宇宙に近づき、宇宙と一体化していくことができるのだと考える。