【第559回】  宇宙との一体化

これまで半世紀以上も合気道を修業してきたわけだが、冷静に考えてみると、合気道とは何か、何を目標に稽古するのか、その目標に到達するためにはどうすればいいのか等々、ほとんど分からずにやってきていることに気が付く。
分からずに稽古をしてきたわけであるが、その分からずにやってきた最大の原因は、分かろうと努力しなかったことだと思う。
しかし、50年以上も稽古をしているし、先もそれほど長くないのだから、そろそろそれらの課題に取り組み、少しずつでも解決していかなければならないだろう。
また、それらの課題を明確にしなければ、これから先の稽古も、本当の稽古にならないだろうし、稽古の意味が半減するはずだからである。

我々は合気道を修業しているわけだが、まず、この「合気道」とは何か、目指すモノは何かを知らなければならない。
勿論、これまでも、分からないながら、自分なりに答えを出そうとしてきた。例えば、合気道は「合気の道」であり、「道」であるということを書いた。合気を探究し、会得するための道である。道とは、自分と目標を結んだものであるとした。
そして合気道の目標は、開祖の教えになる、宇宙との一体化であると書いてきた。

しかし、合気道の修業の目標は、開祖が云われているわけだから、この宇宙との一体化であることは間違いないはずだが、自分にとっては空念仏のようなもので、宇宙との一体化の意味は真からは分かっていなかった。分かりもしないのに、稽古の目指すモノは宇宙との一体化であると書いてきたわけである。

そして、不思議なことに、合気道の稽古の目標は宇宙との一体化であるということの正しさが、判明し、実感できるようになってきたのである。
不確実でも、信じたことをやっていけば、段々と確実なものになっていくようである。
しかし、その発見は新しいモノではなく、前から存在していたモノである。只、己がそれに気が付かず、見落としていただけなのである。
その発見も開祖の言葉の中にあったのだが、人は自分のレベルのモノしか理解できないので、まだそのレベルになかったということになる。

開祖は、宇宙との一体化を、「合気道は、心と肉体とを一つに結ぶ気を、宇宙万有の活動と調和させる鍛錬」であると云われていたのである。つまり、合気道の稽古の目的は、己の気を宇宙の気と一体(調和)させることであると云われているのである。

また、われわれが修業している合気道の「合気」とは、前回の第558回「合気とは何かで」で書いたように、「自己の響き(気)と宇宙の響き(気)が同調するということである」。自己と宇宙との一体化である。
つまり、合気道とは、己と宇宙と一体となる、調和するためへの修業の道ということになるだろう。

合気道というものが分かってきたわけであるが、今度は合気道の目標である「宇宙との一体化」へどのように稽古をしていけばいいのかということが課題になる。先は長い。