【第466回】  宇宙と宇宙の営み

合気道は宇宙の営みの御姿、御振舞いの万有万神の条理を明示する大律法である、といわれている。合気道は技を錬磨しながら精進していくものであるが、錬磨する技には、この宇宙の営みの御姿、御振舞いの条理がなければならず、また、その技で宇宙の条理を明示できなければならない、ということになる。

そのためには、宇宙の営みとはどういうことなのかを理解しなければならない。だが、その前に「宇宙」の定義をしなければならないだろう。

宇宙の定義を調べてみると、下記のごとくいろいろある。
宇宙(うちゅう、Universe, Cosmos)とは、

  1. 広義には、森羅万象(あらゆる物事)を含む全ての存在。天地の全体、「世界」の意味。
  2. 狭義には、天文学的・物理学的にみた「宇宙」。 さらに、狭義的な意味で、「地球の大気圏外の空間」という意味もある。国際航空連盟(FAI)の規定によると高度100km以上のことを指し、アメリカ軍では、高度50ノーチカルマイル(92.6km)以上の高空を「宇宙」と定めている。
合気道の宇宙はもちろん広義の意味であるから、狭義の意味をも含んでいる宇宙である。開祖が残された『武産合気』『合気神髄』などを読むと、この広義の意味の宇宙でないと意味が通じないだろう。

次に、この宇宙の営みとはどういうものか、を研究しなければならない。宇宙の営みは万有万物にとっての条理であり、法則(大律法)であるから、我々が錬磨している合気道の技も、宇宙の営み・条理・法則で構成されていなければならない、ということになる。

宇宙の営み・条理・法則は宇宙同様に無限にあるはずなので、そのすべてを一人で見つけ、技に取り入れ、そして身につけていくことは不可能である。だから、人から人へ、時を越えて探究し続けなければならないと思う。

まずは、これまで論文で取り上げてきた宇宙の営みについて、書いてみる。

○円の動きのめぐり合わせ
合気道の技はこの「円の動きのめぐり合わせ」でできている、といわれるわけだが、宇宙もこの「円の動きのめぐり合わせ」で生成化育している。例えば、月は地球の周りをまわり、地球は自転しながら太陽の周りをまわる。無数の星が、回り、回られ合って、活動している。
○螺旋
地球上の生物は、一日、一年を周期に生きている。朝が来て夜になり、寝て目が覚めれば朝になる、を繰り返しているが、寝て目が覚めた朝の自分は、前日の朝の自分とは違う。また、同じ日であっても、一年前の日の自分と今の自分は違う。一日、一年という周期で同じところに戻っているようだが、やはり違うのである。平面的な二次元で見れば円の出発点に戻ってきたようであるが、立体的に見ると最初と次の回では高低の差ができる。つまり、螺旋なのである。

宇宙で星が生成される際には、螺旋の動きとなる。地球も螺旋からできたし、若い星などは、螺旋でその星ができていく過程を見せてくれる。

合気道の技も、力が出るよう、手が折れ曲がらないように、螺旋でつかわなければならない。

○陰陽
宇宙の万有万物は陰陽から生まれる。伊邪那岐(陽)と伊邪那美(陰)の結びから子供、そして気の大元素を生み出した。陰と陽が表裏一体となってはじめて仕事ができ、成果をもたらすことができる、ということである。電気のプラス(+)とマイナス(ー)も、結びあってはじめて電気が流れる。

宇宙の万有万物は、この陰陽の組み合わせでできて、活動しているように思える。人は男女、動植物は雄雌、無生物にも陰陽の役割があって、例えば、太陽は陽、月は陰などである。
合気道の技も、陰陽を上手につかわれなければならないはずである。

○十字
合気道の技は十字にもつかわなければならないから、宇宙も十字で構成されていると考えてよいだろう。しかし、この場合の宇宙は広義の宇宙でないと、十字を具体的に説明するのは難しいようである。宇宙を世間、世の中、万有万物などとすると、十字や十字の営みを見つけやすい。

まず、宇宙とは時間と空間ともいわれているように、時間軸と空間軸の十字である。また、合気道では、宇宙の万有万物は魂と魄でできているといわれるが、魂と魄の十字と考えてよいだろう。

人間の体は小宇宙といわれ、宇宙のミニチュア版ともいわれるが、人の関節は隣同士が十字に機能するようにできており、大宇宙の人の関節に当たるところは十字であり、十字に機能しているはずである。

人の潜在的意識にも、十字が大事なものとしてあるようである。キリスト教の十字架を初め、スイスやスエーデンなど多くの国の国旗や、島津家の家紋のように、十字がつかわれている。

十字は宇宙の営みで重要な働きをしているようだから、技にもとりいれていかなければならないことになる。