【第46回】 物質文明のカスを取る

今から50億年前に太陽系ができて、それから地球ができるわけだが、始めは人間はもちろん、生物もいなかった。その後、地球上に植物、動物が棲息するようになり、それから人類が地球を支配するようになった。その後、人類は数千年の間に文明を謳歌したが、その反面多くの穢れを残してしまった。環境汚染、オゾン層破壊、人間不信、戦争、殺人などなどである。

人類は、これではいけないとは思いながら、獲得した便利を手放すことに躊躇し、どうしていいのか模索している状態にあると言えよう。キリスト教の聖書には、人間が穢れたことにより、神が大洪水を起こすノアの箱舟の話が語られている。現代もそのような状態にきているのかもしれないが、この穢れを祓いみそぐ方法を見つけられないでいるようだ。しかし、開祖は「現代になって、世界はますます穢れ汚れてきたので、これを祓いみそぐために武産合気が、神の命によって生まれてきたのであります。」と、合気道がその使命を担っていることをすでにいわれている。

現代はモノやパワーが幅をきかせる社会で、物質文明の時代といえるだろう。金があり、力のある者や、力がある国が、そうでないものを牛耳る世界である。開祖は、「ものというものが主になると、気が停滞する。そうするとどう動きようもなくなる。」と言われている。体力やパワーに頼らない合気道の修行を通して、今の物質文明に止まることなく、次の段階に進み、少しでも世界を啓蒙していきたいものである。開祖は、「滞れば少しでも穢れてくさってくる。くさらぬようにするのが武の動きである。」といわれる。稽古で技をかけるとき居つかないようにするだけではなく、毎日の生活や考えも滞らないようにしなければならない、ということである。

合気道は自分の体の穢れやカスを取り除くだけではなく、世の中の穢れを取り去るようにしなければならないのだ。