【第335回】 技を生み出す

合気道の技は、則(のり)であり、宇宙の法則に合していなければならない。合気道の修行の目標は、宇宙と一体化し、宇宙人になることである。宇宙と一体化していくために、宇宙の法則に則っている技を身につけていくわけである。

しかし、合気道の技を身につけるのは、容易ではないようだ。その理由のひとつは、技が具体的にどういうものなのかが不明瞭だからである。かつて大先生(開祖)が見せて下さったものが合気道の技であったはずだが、われわれがやっているものが本当に技なのかどうかはわからないし、どこに間違いがあるのか、何が欠けているのかなどが分からないからである。

だが、ありがたいことに、われわれは開祖が創られ、残された「技の形」(例えば、片手取り四方投げ、正面打ち一教)を知っているし、それを稽古することができる。そして、この「技の形」の稽古をしていけば、技を生み出していけるというのである。

さらに、開祖は合気道の技はどうすれば生み出すことができるのかを、『武産合気』や『合気道新聞』などに書き残されている。『武産合気』に、技を生み出す方法として次のように書かれているので、それを技の形稽古で実際どのようにすればよいのかを、研究してみたいと思う。

「合気道は、地の呼吸と天の呼吸を頂いてこのイキによって、つまり陰陽をこしらえ、陰陽と陰陽とを組んで・・・技を生み出してゆく。」
(第32回 P.111)

分かりやすいように、「後両手取り」で考えてみたいと思う。まず、「地の呼吸と天の呼吸を頂いて」ということは、相手に後ろからまず片方の手を掴ませる。その際、掴ませた手と、同じ側の足もとへ、気持と息を下に落す。そして、反対側の手を掴ませたところで、重心を反対の足に移動しながら、掴ませている両手を前に出しつつ上げていく。上下の動きが天の呼吸、前に出したり、横に移動するのが地の呼吸であり、これで「地の呼吸と天の呼吸を頂いた」ことになる。

次に、「陰陽をこしらえ」とは、掴ませて働かす手は陽であり、反対側の手は陰となる。手の働きには必ず陰と陽があり、陰と陽は、陰から陽に、陽から陰にと、交互に変わる。右手が陽なら左手は陰、そして左手の陰が陽になり、また陰になるのである。手は陰陽でつかうようにしなければならない。これを「陰陽をこしらえる」というと考える。

最後の「陰陽と陰陽を組む」であるが、上で説明したように、手は陰陽でつかわなければならないが、足も同じように陰陽で使わなければならない。武道はいわゆるナンバの動きになるので、同じ側の手と足が同時に、そして左右交互に陰陽で動かなければならないことになる。手と足だけではなく、腰も肩も同じ側が陰と陽を組まなければならない。これを「陰陽と陰陽を組む」というはずである。

「地の呼吸と天の呼吸を頂いてこのイキによって、つまり陰陽をこしらえ、陰陽と陰陽とを組んで」を後両手取りでやると、これが技だという感覚になる。どれかは分からないが、技が生まれていると考えてよいだろう。

後両手取りでできたら、他の片手取りや正面打ちで試し、そしてすべての技(形)でできるようにすれば、技がもっと生まれ、技がより明確になっていくのだろう。