【第297回】 合気道の公案

かつて開祖のお話をお聞きして、不謹慎にも時々、それは逆ではないか、矛盾しているのではないかと思い、頭が?※△#?と混乱したことを覚えている。

その後、開祖がお亡くなりになり、開祖が話された内容をまとめた『武産合気』、『合気神髄』などを読むようになったが、それにも矛盾するように思える教えの文字を多々見かけた。
しかし最近では、これは禅でいう公案というものであろうと思うようになった。

公案とは、禅の祖師達の具体的な行為・言動を例に取りあげて、禅の精神を究明するための問題であり、禅の不立文字を表すものであるという。

不立文字というのは、文字では、本当のことは伝わらないという意味である。合気道の場合もまさしく、開祖の実際の修行と言動から出てきた実例であり、合気道を精進していくために解明していかなければならない問題であるが、文字だけではほんとうのことがわかりずらいので、まさに不立文字であると言えよう。

合気道は、陰陽、裏表、前後、上下、左右、強弱、呼吸、剛柔、魂魄、等など相反するものを、表裏一体化したものを養成していくものであるが、技の稽古法においても相反し、矛盾し合うことを一体化して身につけていかなければならないようである。

これまでの論文で幾つか紹介したが、その合気道の公案と思われるものをここにまとめてみたいと思う。但し、一つの公案を、複数回書いているし、どこに書いたのか分からなくなったものもあるので、興味がある場合は、お手数でもお探し願いたい。

等など。

これまでのところ、公案に出会い、技の練磨を通して、自分なりに回答を出したつもりだが、公案をつくられた方が最早おられないし、周りにこの解答の良否を判断して下さる方もいないので、自分で判断するしかないない。

判断の材料は、その回答で技が効くかどうかによると考える。技が効かなければ、どんなによい回答でも間違いのはずである。合気道の公案も、やはり不立文字ということになろう。