【第294回】宇宙との一体化、万(よろず)和合(道歌8)

合気道の最終目標は宇宙との一体化であるが、そのために、技の練磨を通して精進していかなければならない。しかし、技、そして技の練磨とはどういうことなのかが分からなければ、精進のしようがないし、宇宙との一体化の可能性も消滅してしまうことになる。

技とは宇宙の営みを形にしたもので、そこには法則や条理がある。これを開祖は、宇宙の法則であるといわれている。宇宙の法則とは、時間と空間、つまり、すべてのものに受け入れられ、結びつくことであり、それを形にしたものが技ということになる。だから、宇宙に則った技は、国籍や人種が違った相手、時代が違う人にも、有効に働くはずである。

しかしながら、宇宙の営みなど人智では計り知れない。137億年かけて創られ、又この先、宇宙が完成するまで、まだどのくらいかかるかわからない。宇宙の法則は無限にあるだろうから、一人の人間がその法則を見つけ、身につけるのには限界があるだろう。

しかしながら、合気道の修行は、この技の練磨であるから、無限にあるだろう技を練磨していかなければならない。

そこで、宇宙の法則を形にした技を練磨するとはどういうことなのか、また、どのように練磨しなくてはならないかを考えなくてはならない。

練磨には幾つかの段階があるが、基本的には三つに分けられ、そしてそれが絡み合い、螺旋状で伸展していくものと考える。 一つ目の練磨は、技を見つけていくことである。宇宙が一つのポチから始まり、今日があり、我々がいるわけだが、これまでの宇宙ができるためには、いろいろな営みや法則・条理があったはずである。開祖は、その法則・条理の多くを『古事記』やご自身の中に見出されていたわけである。つまり、天の浮橋、十字、螺旋、円のめぐり合わせ、陰陽等などである。

二つ目の鍛錬は、この技を身につけていくことである。天の浮橋、十字、螺旋で技を使っていくことである。それまで魄でやっていたものを一度忘れ、見つけた技でやっていくのである。ゼロからの再出発であるから、一度は弱くなるはずであり、よほどの勇気と決心がいるであろう。

三つ目の鍛錬は、宇宙の営みであるこれらの技に、自分を入れ込んでいくのである。技を小手先で使うのではなく、その技の中に、自分を入れていくのである。技が主で、我は従となる。ちなみに、二つ目の鍛錬では、まだ我が主で技は従である。

自分を少しでも多くの技に入れ込んでいけば、宇宙の営みがどんどん身に入ってくることになり、ひいては宇宙と少しずつ一体化していくことになるはずである。

合気道の目標は、宇宙との一体化といわれる。開祖は、これを道歌で、
合気とは 万(よろず)和合の 力なり たゆまず磨け 道の人々
と詠われている。

「万」とは宇宙でありeverythingである。宇宙との和合、つまり一体化はそう容易なことではないが、気を抜かずに技を磨いていきなさい、ということであろう。