【第258回】円のめぐり合わせ

合気道は技を練磨して精進していくものだが、技とは何か、技はどのように練磨していかなければならないのかを、よく考えなければならない。
入門したての頃の初心者は、技とは一教とか入り身投げとか小手返しであるだろうから、こんな質問をする方がおかしいと思うだろう。しかし、それが技だとしたら、その程度のことは数年で覚えてしまうことであり、際限なく追求する対象であろうはずはない。

技は決して完璧に遣えるようにはならないといわれるのだから、技は想像を絶する深遠なものであるはずであり、ただ安易に稽古を続けていけばいいようなものではないはずである。技にはもっと深い意味があるはずである。

合気道の技は宇宙の営みを形にしたもので、宇宙の法則に則っていなければならないという。宇宙の法則に則った技を遣うには、技を遣う体遣いも宇宙の法則に則ったものでなくてはならないだろう。

開祖は、人の体は宇宙と同じであるといわれている。体そのものには問題がないが、問題は、体が宇宙の法則に従って動かず、そして、法則に従って遣われないことなのである。体が宇宙と同じように動けば、宇宙と一体化できることになるといわれる。そこを、われわれ合気道同人は求めていかなければならないことになるだろう。

まず、宇宙の法則に従った動きのできる体をつくらなければならない。人は本来、宇宙からその体をもらっている。だが、年と共にカスが溜まってしまい、うまく動けなくなってくる。だから、合気の技の練磨を通して、カスを取らなければならないのである。とりわけ、一教、二教、三教はカス取りの技と言われるから、これらの基本技および呼吸法や受身などでカスを取らなければならない。

カスが取れ、体がある程度できたら、その体を法則に従って遣わなければならないことになる。

法則にはいろいろあるだろうが、そのひとつに「円」がある。開祖は、「円の動きのめぐり合わせが、合気の技であります」(「合気神髄」)と言われている。つまり、合気の技は、複数の円の動きが連動したものであるということになろう。

円というのは、380度を一周する線であるが、その何分の1でも円は円である。例えば、手先を縦から横に反せば90度ぐらいの円になる。合気道では十字に反すことによって、円の動きをすることになる。

体がどれだけの円運動をするかを、例えば、「片手取り四方投げ」で見てみると、相手に持たせた手首と小手と上腕が反転々々して円く動き、手先から肩までの手が自分の肩を中心に円を描き、腰腹・体幹、顔、肩、股関節、ハムストリング、足のあおりによって足底と膝も円く動き、また左右の足に重心が移動する軸が円く動く。一つの合気の技は、このような円の動きの連動から成っているのである。

従って、この内の一つでも円い動きでないとしたら、合気の技にならないことになるだろう。

円い動き、円く動くことが合気の動きであり、宇宙の営みであるが、合気の技を掛けている人は地球の上で動いているので、大きな意味では円く動いていることになる。なぜなら、地球は円いからである。また、その地球は太陽の周りを円く動いているのである。

また、技を遣っている体を構成している原子は、やはり円く動いているようである。合気の技は、技を掛ける際の体の動きだけでなく、ミクロの世界とマクロの世界とも連動した、円のめぐり合わせでできていることになろう。