【第160回】 人と宇宙

合気道は真の武道を追求するものである。真の武道ということについて開祖は、「宇宙のいとなみが自己のうちにあるのを観得するのが真の武道」と言われている。(「武産合気」)従って、真の武道のためには、宇宙のいとなみが自分の中にあるということを感じ、そしてそれを技で現すことができるようにならなければならないことになる。

宇宙のことをタカアマハラとも言う。開祖は、「タカアマハラも自分にあるのであります。天や地をさがしてもタカアマハラはありません。それが自己のうちにあることを悟ることであります。」と言われている。そしてこの人と宇宙の共通性を、「タカアマハラは造化機関であり、人もまた同じ素質、同じめぐり、動きをもっている造化機関なのであります。」(「武産合気」)と言われている。また人は生きているお宮(生宮)であり、神はこの生宮を通してこの世に現れるのだと言われる。神にとってもタカアマハラと生宮が活動の場ということになるので、人と宇宙は繋がっていることになるだろう。

人と宇宙の繋がりに関して、「生き通しの生命を腹中に胎蔵し、宇宙も悉く腹中に胎蔵して、自分が宇宙となるのであります。自分が宇宙と一体となるのであります。それはとりもなおさず高天原と一体です」と言われている。

人と宇宙は繋がっていると開祖も言われているのだから、そう信じなければ先へ進めないことになる。しかし、信じたとしても、それを実感できなければ分かったことになならず、またそれを技で現すことができなければ本当に分かったことにならないし、技が出来たことにもならないだろう。まだまだ先は長いが、とりあえず「宇宙のいとなみが自己のうちにある」、そして、人と宇宙は繋がっていることを信じることから始めることにしよう。

人と宇宙が繋がると、いろいろなことが分かるのではないかと期待できる。例えば、開祖がよく言われていたところの「我はすなわち宇宙」「肉体は黄金の釜」「宇宙組織の魂のひびきを神習う」等という言葉以外にも、「天の浮橋に立つ」「天之御中主神となって立つ」「宇宙の道」「小戸の神業」「山彦の道」「武は神なり」などの難解なキーワードも氷解するような気がする。

参考文献  「武産合気」