【第12回】 宇宙の中心に立て

開祖は常々、「宇宙の中心に立って仕事をせよ」と言われていた。自分が宇宙の中心に立っているつもりになり、中心にいる自分を相手に廻らせるようにしなければならないということであった。
稽古をしていて、技をかける時には、よほど注意しないと自分が後退したり、相手の周りを廻ってしまい、自分が中心であることを忘れてしまうことが多いようである。こちらが後ずさりしたり、中心を失えば、技は効かなくなっていい仕事はできないのである。
中心に立つとは、宇宙に根ざしてしっかり立つという意味でもある。開祖の体は地面に根が生えたようだったと言われている。開祖の体軸は天と地と一直線で結ばれているような姿であったのは、このようなことだろうか。

武士の嗜みであったお能の世界では、相手を自分の周りを廻らせる必要がないので合気道とは違うのだが、次の3つの軸意識で立て(含む運動)といわれているらしい。
(1) 自分の体軸を感じ、その体軸に沿って(体軸感覚)、
(2) 下半身は重心から地球の中心に向かって下方向に伸び(重心感覚)、
(3) 上半身は天に向かって上方向に伸びる感覚 (「能に学ぶ身体技法」ベースボール・マガジン社)

人は誰でも否応なしに、立てば地球の中心に向かって立っているわけだが、それを意識していないだけである。正しい体軸を持ち、重心感覚を持って、上半身が天と繋がった感覚を持つことができれば、「宇宙の中心に立って」仕事をしているという気持ちになり、いい仕事ができるだろう。