【第999回】 これまでの「合気道の体をつくる」のまとめ

この論文も目標としていた1000回を残すところ2回となった。やるべき事、やりたい事、書きたい事はまだまだあるようで、1000回で満願ということではないが、他の3論文同様、ここでこれまでの論文の締めくくりをしてみたいと思う。どのような思いから書き始めたのか、何を目指していたのか、何を学んだか等をまとめてみたいと思う。

合気道に入門した頃の体つくりの基本は唯々稽古をすることだった。思い切り相手を投げ、素直に受けを取り汗をかき、筋肉をつけ、内臓を鍛えた。学生だったので時間はあった。一日、最低2時間、時には3時間稽古した。日曜日も稽古に来ていたので週7日稽古した事になる。この頃の体つくりはスタミナづくりだったと言える。先輩たちには力や技で敵わなかったが、先輩たちに息を上がらせていた。スタミナ勝ちである。
しかし、本当に強い先輩や同輩にはスタミナでは歯が立たなかったので何とかしなければならないと思った。

大先生、師範の先生、先輩は何故、強く上手かったのかを考えてみると、体ができているし、体のつかい方が上手いということが分かった。体のつかい方が上手いとは無駄がないということであり、理に適っているということである。つまり、体のつかい方にも法則があるはずだと考えたのである。最初に発見しやってみて効果があったのは陰陽の法則であった。足も手も右左規則正しく陰陽(待機―出すー待機―出す)でつかう事である。足が右→左→右→左と進むのを右→左→左など進めばたたらを踏むことになり技にならない。初心者はまずこの陰陽の法則から、合気道の体づかいの法則を学べばいいと考えた。

この頃が今から20年前で、この論文を書き始めた頃だと思う。
そこで道場稽古の相対稽古で、己の弱いと感じたり、鍛えなければならないと思った体の部位を一つ一つ鍛えて、それを論文に記してきた。合気道の技をつかうために関係あるすべての部位を鍛えたはずである。手首、肘、肩、胸鎖関節、足、腹、腰、首、頭等である。これらの部位自体とそして部位と部位との繋ぎ部である。これを大先生は、合気道はカス取りであり、禊であるといわれているのである。

次に体の部位と部位は繋がり合い、共に働く事がわかってくる。右手と左手、右手と右足(左手と左足)、腹と手、腰と足と手、足底の踵―小指球―母指球等である。
また、体には裏と表があるということが分かってくる。体は表をつかわなければならないが裏も鍛えなければならない。裏が体の土台になり、土台がしっかりしないと気も魂も産まれないからである。体がしっかりし、機能することは三元八力が働くことであり、宇宙と結びつく事になる。
これまでは体を体で動かしていたが、息で体をつかうようになる。魄の技づかいから息の技づかいになる。体から大きな力が出るようになるし、動きは切れず、そして気が産まれ、気で体をつかうようになる。

布斗麻邇御霊の水火の形で体と息をつかうようになると宇宙との一体化が実感出来るようになる。天地と結び、伊邪那岐神と伊邪那美神と共に体と技をつくっていくのである。
そして人間の体は宇宙と同じ営みをしており、小宇宙であることがわかるのである。
故に、体、小宇宙は大宇宙の営みに則ってつかわなければならないということになる。これが最終的な合気道の体をつくるということになるということになるだろう。1000回でやっとここまでたどり着いたわけだが、これを技で現わしていかなければならない。まだまだ時間が掛かりそうである。

因みに、この999回の後に最後の1000回が残っているわけだが、そこでは1000回以降どうしたいのかを記すことにする。