【第993回】 頑強な土台をつくる

これまで「土台」に関する論文を20以上書いてきている。これは「土台」が大事であるという事と「土台」がなかなか身につかなかったという事を意味するということであろう。
最近は相対稽古でお互いに力一杯の稽古をするようになってきたが、特に、正面打ち一教には苦労している。これまでは相手はこちらに合わせるように打ったり、掴んだりしていたが、今では遠慮なく攻撃してくるのである。その攻撃を捌くのは容易ではない。しかし有難いと思っている。何故ならば、相手が思い切り、遠慮なく攻撃するという事は、こちらにそれだけの力が備わっているか、備わっていなければならないと評価してくれていると思うからである。勿論、はじめから強烈な攻撃を捌くことはできず、手こずることになるが、それがこちらにとってはいい稽古になるわけである。上手くいかなければ、何処が悪いのか、どうすればいいのか等を研究する事になるからである。

さて、苦労している正面打ち一教である。段々分かってきたが、正面打ち一教は非常に難しい技であるということである。繊細さと力強さが必要であり、息と体全体を駆使しなければ掛からない技だと痛感するのである。
これまで論文で研究し記してきた要件をすべて駆使しなければならないが、それらの要件を更に深く、強力にしなければならないことを再認識させられたのである。
その重要性の再認識をしたのが「土台」である。これまでの「土台」を更に強固にしてつかう事である。

正面打ち一教が上手くいかない原因を考えると、己の体が十分しっかりせず、そしてしっかり働いていないという事が分かった。
体がしっかりするという事は土台がしっかりする事である。土台がしっかりするということは、土台である手の平、胸、腹、顔が頑強で芯がしっかりし、強固になることである。故に、まずは頑強な土台をつくることである。
それでは正面打ち一教(右半身)で頑強な土台をつくるにはどうすればいいのかである。
“う”の言霊の○で息を吐きながら右手は居合腰で手を出すと、右手の平、胸、腹、顔が凝結し、頑強になる。
“う”ので腹中の気を引くと右手の平の気は手の甲→腕→肩→背中→腰に流れ、土台は更に頑強になる。例えば、腰を張ると胸が張るというように体の表で体の裏の土台を強固にするのである。
頑強な土台ができて右手が出ると反対側の左手が自然に上がるが、左手も自然に頑強になり上がるのである。
右手は顔、胸、腰、足と一軸になり、大先生が謂われる、「腰、足、手の一体化」になる。頑強な体になる。
もう一つの右手のつかいかたは、剣としてつかうことである。剣としてつかうことによって勢いがつくし、刃筋が通るようにつかえるからである。

更に、頑強な土台をつくり、つかうためには、左右の両手を一緒につかうことである。これは体も手も頑強になっていなければつかえない。また、両手がつかえるようになると、右手は左手で動き、左手は右手で動く事がわかる。正面打ち一教だけでなく、片手取り呼吸法も両手をつかわなければならない事になる。