【第991回】 極限まで手を鍛え、つかう

これまで手を鍛え、その鍛えた手で技を掛けなければならないと言ってきた。気で技をつかうようになると、まだ手の鍛えとつかい方が十分でない事を実感した。更なる鍛えが必要なのである。
手はいろいろな部位を指すが、ここでは手首から手先までを指す。またこの手は手の平（手掌）と手の甲（手背）、手と指で成るとする。これを意識して手を鍛え、つかうことができるからである。医学的な分類は合気の技をつかうのには、今のところ必要ないと考える。

気を生むためには己の体の凝結が必須であることは既に述べた。己が凝結すると、接した相手が凝結し、くっつく。己の凝結が強ければ強いほど、相手を凝結、引っ付けるのも強力になるのである。合気道の醍醐味である強力な位づけができるのである。触れただけで相手を凝結し、くっつけてしまうのである。

最も凝結しやすく、凝結しなければならないのが手である。
それでは、己の手がこれまで以上に凝結するため、極限まで凝結させるためにはどのようにすればいいかということになる。
手を凝結するとは、手を固めることであり、手を開くことである。手の平を固め・開き、手の甲を固め・開き、指を固め・開くことである。この固め。開くを息でやるのである。いくら手に力を入れて力んでも手は大して固まらないし、開かない。
息は、先ずイクムスビから始めればいいだろう。イーと息を吐いて、クーと息を引き、ムーで息を吐いて、手を縦→横→縦と伸ばし→拡げ→伸ばすのである。これは縦横の十字になるので気が生まれ、相手をくっ付ける事はできるが、次の息づかいに比べると単調であり、力も弱い。

次の息づかいは布斗麻邇御霊の水火に“あおうえい”の言霊である。この言霊で手を固め、開くのである。
“あ”で、息を吐きながら腹中の気を集める。の姿である。手が上がる。深呼吸で上がる手である。
“お”で、息を吐いて、腹を締めると手の平が凝結する。手の土台ができる。腹と手の凝結であり、の姿である。
“う”で、息を吐き腹中を開きながら、手の土台を確保しながら、親指を支点に掌底━小指球（小指）を返す。土台の手の平が強靭になる。である。そしてこの強靭になった土台の手の平の上の手の甲に気・魂が載ってくる。
引き続くで、強靭になった土台の手の平を手の甲（気・魂）で息を吐きながら下ろす。手の平と手の甲の葛藤がある。土台は更に強靱になる。
“え”で、息を引き乍ら仙骨を開き、手と指を思い切り開く。鋼鉄のような手になる。である。

これで鋼鉄のような手が出来たわけだが、更に分かってきた事がある。一つは、片方の手が十分に凝結すると他方の手も自然に凝結することである。凝結した片方の手をつかっても他方の手が凝結しなければ凝結が不十分ということになる。極限までの凝結が必須なのである。
次に、手が極限までに凝結すると足、胴、頭も独りでに凝結するということである。これも上記同様、手の極限までの凝結が必須なのである。
極限まで手を鍛え、つかっていきたいものである。