合気道の技は主に手で掛ける。相手の攻撃も手であり、それを受けて技を掛けるのも手である。故に、手のつかい方は大事である。初めのうち、所謂、魄の稽古の段階では、手の大事さに気づかずに手をつかっているが、気の稽古に入ってくるとそれに気づかされる。
相手が思いっきり、遠慮なく打ってきたり、掴んでくると、その攻撃を捌き、技にするのは容易ではない。最早、腕力(魄力)だけでは処理できない。正面打ち一教や片手取り呼吸法を想定すればいい。
この手のつかい方をどうするかに関してもこれまでいろいろ研究し、書いてきた。例えば、最近のものでは、気で己の手を凝結し、その手で相手の手を凝結、そしてひっつけてしまう。手は居合腰で仙骨を開き、息陰陽でつかう等である。
段々、分かってきた事は、合気の技は身体を最大限につかわなければならないということである。大先生はこれを「武は体の変化の極まりなき栄えの道なれば、一をもって万にあたる道、一より方法を生み開く草薙の剣を練り、その責を完遂、達成せしむることにある。」と教えておられる。
この教えの栄の道を生み開くものを見つけたので書くことにする。それが今回の主題の「足は踵から、手は掌底から」である。体のほんの微細な部位ではあるが、大事な働きがあるということなのである。因みに、このテーマは第961回でも取り上げているが、この時はまだ思索段階であり、今回のものは実践でその効果が示されたものである。
まず、これまでも体をつかう順序が大事であると言ってきた。腰腹→足→手の順である。手をつかうためには足をつかわなければならないから、足のつかい方が重要になる。今回の足は足底である。足底を踵→小指球→母指球と地につけ、母指球で他方の踵→小指球と地に着けて進むのである。また、方向転換は母指球で行い、母指球で仙骨を開くのである。
手はこの足に連動しなければならないのである。掌底と足底の三点を結び、連動するのである。足は、踵→小指球→母指球と動くわけだから、手も掌底→小指球→母指球と足と連動して動かなければならない。
つまり、足は踵から、手は掌底からつかわなければならないという事である。正面打ち一教で手を上げる場合も、呼吸法で手を出して掴ませる場合も、足は踵、手は掌底から出すのである。手は掌底―小指球で相手の手と接し、相手の手を凝結させ、相手と一体化するのである。正面打ち入身投げ、横面打ち、剣の振り上げ等も同じである。
この手の連動での足は踵から、手は掌底からを上手くつかうためには幾つかのポイントがある。