【第989回】 螺旋で動く手をつくり、つかう

魄の稽古をしている間は難しいが、気の稽古、つまり気で技と体をつかう稽古をするようになると、魄の次元の稽古と異質の稽古をしていると実感することになる。
今回はその内の一つである手をつくり、つかう稽古を探究することにする。
魄の稽古では手を規律なくつかっている。自由と云えばそれまでだが、言ってみれば、無暗に振りまわしているということである。
それでは気の次元の稽古で手はどうすればいいのかということになる。

手は上下左右に動かさないことであり、動かさないで動くようにするのである。そのためには、

  1. 呼吸によって手を凝結させる。息を吐き、息を引くと手は凝結する。
  2. 凝結した手を縦の動きの螺旋でつかうと手は自然と上がり、下がる。
  3. これに腰腹支点の横の円の動きをすれば手は左右に動く事になる。大小自由な円の動きになる。因みに、初心者は、手をこの横から使い始めるから、手が凝結せず、また、手に芯ができずに強力な手とならないし、技がつかえないことになるわけである。
手のつくり方とつかい方を簡単にまとめると次のようになるだろう。 このように、手が凝結し、手が螺旋で動くようになると合気道の手をつかい、合気の技をつかっているという実感が持てるようになる。大先生の言われる、合気道の門に立ったという実感である。そしてこの実感が間違いでないということは、次の大先生の教えが物語っているからである。
「呼吸の凝結が、心身に漲ると、己が意識的にせずとも、自然に呼吸が宇宙に同化し、丸く宇宙に拡がっていくのが感じられる。その次には一度拡がった呼吸が、再び自己に集まってくるのを感じる。このような呼吸ができるようになると、精神の実在が己の周囲に集結して、列座するように覚える。これすなわち、合気妙応の初歩の導きである。合気を無意識に導き出すには、この妙応が必要である。」（「合気神髄」P.87）

以上