【第982回】 手の指づかいと働き

「修業方法を一言すれば、武は体の変化の極まりなき栄えの道ならば、・・・」(合気神髄 P.159)とあるように、体を極まりなく鍛え、働いて貰えるようにしなければならない。両手、両足、頭などの五体だけでなく、手足の指先から頭のてっぺんまで、すべての体の部位を余すことなくつかえるように鍛えなければならないということである。
従って、これも終わりのない稽古となるわけである。

手足のつかい方、頭のつかい方はこれまで研究し、技に取り入れてきた。また、最近では手の指の修行にも入っていた。親指を体とし、手刀部である小指と薬指を用につかう事である。
しかし、手の指には更なる働きがあり、更なる指づかいをしなければならないことが分かってきたのである。

まず、人差し指である。これは前に書いたが、人を指す指である。つまり、己が進む対象を指し示す指である。人差し指の方向がしっかり定まらなければ手も体も前に進めないことになる。その好例を下の写真で示す。有川定輝先生の人差し指のつかい方である。

次に中指である。中指をつかうのは容易ではないが、大事な働きをしているのである。中指は五本の指の真中にある指であり、手の芯であり、中指→手・腕の中心を通り→肩甲骨→胸鎖関節→他方の肩甲骨→同腕・手の中心→同中指と一本の長い手をつくる。つまり、中指の働き無くして手は一本にならず、手も体もバラバラになってしまい、技にならないことになるのである。
次の大先生の中指と有川先生の中指が一本の手をつくっているのがよくわかるはずである。
しかし、最初は手掌や指先、手・腕がこのように伸び・張るのは難しいはずである。どうしても手先や手・腕が歪んだり折れてしまうのである。
この問題を解決する方法は合気道の基本である十字である。 この縦と横の十字で気が生まれ、手先、そして一本の手が頑強になるというわけである。

これが手の指づかいと働きであるが、手に指があれば足にも指があるわけだから、足の指づかいと働きもあるはずだから要研究である。既にそのヒントは、上記の写真の「有川先生の中指と一本の手」の先生の足にもあるようである