【第981回】 愛を売り込む

毎朝、『合気神髄』か『武産合気』を少しずつ拝読している。『合気神髄』が読み終わったら、次は『武産合気』、これが終わったら『合気神髄』・・・と続けている。もう何十回読んでいるかわからない。お陰でだいぶ分かるようになってきた。因みに合気道で分かるということは、頭で解ることの他に技で現わせることが出来るという事と考えている。技で表わせなければまだ分かった事にはならないということになる。

今朝、拝読した『合気神髄』項の標題は「世の中は無欲の者の所有になる」(P.47)であったが、次の文章に体が反応した。これは素晴らしい、重要であるという反応である。
「世の中はすべて根本は経済であります。経済が安定してはじめて、そこに道が拓けるのであります。我が国の経済は精神と物質と一如であります。日本では「売る」方が先であり、日本のすべて「誠」を売り込む、「愛」を売り込むのであります。武道におきましても、まず愛を売り込み、人の心を呼び出すのであります。」

まず、経済が安定しなければならないということである。特に、日本の経済と、個人(または家族)の経済である。経済が安定しなければ合気道の稽古もできないわけだから、まずは経済を安定するように努めなければならない。経済が安定してはじめて稽古に集中できるわけである。
次も経済であるが、経済(商売)は精神と物質と一如でなければならないということである。ただ物(物質)を売るだけでなく、正しい精神が伴った物を売らなければならないという事である。ただ儲ける為ということは物だけで精神が欠如した経済(商売)ということになる。最近はこのような傾向にあるのが嘆かわしい。
その精神とは「誠」「愛」である。誠、愛とは買った相手が喜び、満足してくれるよう相手の立場に立った精神である。これを買ったら相手は喜んでくれるだろうなという物を売り込むのである。「誠」「愛」を売り込んだ結果、お金(物)を貰うということである。相手も満足し、こちらも満足しウィンウィンとなるわけである。

問題は次の「武道におきましても、まず愛を売り込み、人の心を呼び出すのであります。」である。相対稽古で相手に技を掛ける際、愛を売り込み、人の心を呼び出すとはどういうことなのか、どうするのかという事である。
一つ一つ分解して考えてみることにする。
「愛を売り込み」とは、経済(商売)でのまず先に売り込む事である。売り込むのは愛、誠である。愛と誠で技をつかうということになる。それではこの愛と誠とは、武道において何かということになる。愛とは宇宙愛と考える。宇宙の心、宇宙天国建設の生成化育の精神であり、万有万物に分け隔てなく与えられている愛であると考える。人は地上楽園建設の生成化育のお手伝いをする使命を帯びているわけだから宇宙の愛と共鳴できる。宇宙と一体となり愛を、技を通して売り込むのである。因みに、誠とは真理である。宇宙の営み、宇宙の法則である。これで技をつかうのが、誠を売り込むことだと考える。
この愛と誠を技を通して売り込めば、お互いに宇宙と地上に楽園を建設するお手伝いをこの稽古でしようということになり、相手は同調してこちらの愛と誠の技に自然とついてくるのである。これを「人の心を呼び出す」というのだと考える。