合気道を上達するためにはいろいろな要件を満たしていかなければならない。合気道だけでなくすべての習い事でも同じはずである。
やるべき事は沢山あり、それを覚え、身につけるのは容易ではない。合気道に於いては、まずは型を覚える、受けを覚える等である。当時はなかなか上手くいかず大変だと思ったものだが、振りかえってみると何も難しいことではなかったのである。
先生が模範を示してくれて、間違いを正してくれたり、正しく導いてくれたりと先生や先輩に習っていたわけである。先生や先輩の教えの通りに出来なくとも、その内に先生や先輩に近づくことができると安心し、今思えば気楽なモノだった。
しかし、いずれは先生や先輩がいなくなり、誰からも教われなくなり、自分で上達の方法を考え、実践し、上達していかなくなる。誰も教えてくれないわけだから、自分でやっていかなければならなくなるわけである。先生から教わっていない新しい要件を自分で見つけ、技に取り入れ、自得していかなければならないのである。
例えば、「気」や「魂」である。気や魂は合気道に欠かす事ができない要件であるわけだが、それがどのようなモノで、どのように会得することができるのかの教えは無い。自分自身でそれを考え、会得していくしかない。また、会得したと思ってもそれが正しいのかどうかの判断の判断も正しいかどうかも分からない。因みに、「気」「魂」が大事であるとの教えだけでも有難いのである。これを自分で見つけるだけでも大変だし、ほぼ不可能であると思うからである。
分からないからと言って、何もやらなければ上達はない。
運のいい事に、はじめはさっぱりわからなかった「気」がわかり、多少つかえるようになったので、どのようにしたかを思い出してみる。また、これから挑戦しなければならない「魂」もその「気」の会得方法でやっていくつもりである。学びのパターンをつくるという事である。一つのパターンができれば次からは容易になるはずである。
合気道は武道であるから敵を制する力がなければならない。敵を制する力には強弱と質の違いがあり、そして説得力が違う。合気道はより高次の説得力を追求する武道である。説得力とは相手を納得させることである。最も下の力は肉体主体の魄力、次は息で肉体と技をつかう息主体の息力、三番目は気で肉体と技をつかう気力、最後は魂が肉体の上・表になり魂が主動する魂の力となる。
魂の力は魄力、息力、気力より強力であり、また、説得力がある力である。因みに、魂での説得力の基は気の凝結力と引力であると考える。
この辺までは魂についてわかったわけだがこの先がわからないで右往左往しているところである。
これを何とかしようとやっていることは、まず、魂に関しての大先生の教えを『合気神髄』『武産合気』から探し出すことである。勿論、気でもそうした。
そして見つけたのが次の教えである。この教えを見つけた時、ピーンと体が反応したので大事な教えであるはずである。気に関しての教えもこのように体が教えてくれたのである。体の反応を敏感になるように鍛える事も大事なのである。
「また、松というのは四角を意味しております。ちょうど伊予の二名島の国造りの折に、吐く息は空水となって、空に昇っていって満天に拡がっていきます。その三角の気が昇り、その気の中に武道でいう自分の魂の気が存在するのであります。すなわち魂が、その中に入っているのです。」(合気神髄P22)
この教えで何故、何処に「魂」を感じたかである。この教えを正面打ち一教や片手取り呼吸法の技と体に会わせて考えてみると、これが魂かということがわかるのである。
まず、「伊予の二名島の国造りの折に、吐く息は空水となって、空に昇っていって満天に拡がっていきます。その三角の気が昇り」とあるが、「伊予の二名島の国造りの折り」というのは、伊邪那岐と伊邪那美の伊予の二名島の国造りである。布斗麻邇御霊ではとなり、吐く息
が引く息に変わり
となるが、この際、三角の気が昇るのだが、この三角は△○□の三角である。合気道の技はこの△○□で成り立っているのである。三角体の気が△から○になり、空に昇って満天に拡がる。これはこれまでの技づかいでやってきたことなのでよくわかる。大事な事はこの後である。この三角の気の中に魂が入っているということである。これが新たな発見である。“う”から“え”で(三角の)気から魂に変わるという事になるわけである。
実際に、これで技と体をつかうと、“う”までは作為的に気力をつかうが、“え”では手や体が無作為で自然に動くようになるのである。自然とは恐らく宇宙の営みであり、宇宙の意志であり、神ということになるのではないだろうか。
これで他の技をつかっていけば魂の技になり、魂が会得出来るのでないかと期待している。
要は、知るべきことがわからない場合は、想像と挑戦が必要であるということなのである。もしかしたらその想像は間違いかも知れなが、そう想像した自分を信じ、それに挑戦するしかないと思うのである。
今回は想像と挑戦が必須であるということがどのような事なのか、最大の難関の魂での例でやってみた次第である。