前回、足は踵からつかわなければならないと書いた。つまり、足は、踵→小指球→母指球の順に地に着けるという事であり、この順序を違えれば、力が出ないし、動けなくなったり、技がつかえなくなるのである。
この足づかいとこれまでの足づかい、例えば、左右陰陽、十字、息陰陽、水火等で体の動きもよくなり、手先からの力も大分出るようになった。
故に、この足は踵からつくは原理原則の宇宙の法則という事になり、技と体をつかうに当って実行しなければならないことを実感したわけである。
しかし、大先生が云われるように、何事もこれでいいという事はなく、常に反省と改善を繰り返さなければならないことを改めて実感することになった。それは足を、踵→小指球→母指球の順に地に着けることは必要だが、十分でないということである。ただ踵から地に着けばいいというのではないのである。踵が地についただけでは、地の力が腰腹に十分集まらないし、手先から十分な力も出ないのである。
地の力が腰腹に十分集まり、手先から強力な力が出るようにするにはどうすればいいかということになる。
そのためには、踵がしっかり地に着く事である。“あおうえい”の“お”で体重と踵を地に下ろし、腹を締めるのである。そうしないと、爪先に体重が掛かり、体が止まってしまい、手からの力も出なくなる。
よほど注意しないと、足は爪先からついてしまいがちになるのである。これが膝や腰を痛めることにもつながるわけだから、いいつかい方ではない。その訳は、体は表をつかわなければならないからである。体の裏の爪先、膝をつかうのではなく、踵、腿等の体の表をつかうということである。
因みに、足を爪先からついてしまうには、日常生活の習慣にもあると考える。それは靴文化である。靴には踵があるので、足の踵は浮いた状態で歩く事になり、素足になると足の踵が地に着きにくくなるのである。私ごとではあるが、数年前から雨の降らない日は雪駄を履いているが、踵を意識していたわけではない。恐らく、無意識のうちに、靴の違和感や、踵から地につく快感を楽しんでいたようだ。しかし、今、雪駄を履いた意味、履きたかった意味がわかった事は嬉しいかぎりである。
足が踵から地にしっかり着くと、腹が締り腰腹は前足にのり、足と軸をつくる。ここから踵→小指球→母指球と体がスムースに移動できるようになる。また、軸になった体の中心にある手も掌底から出せば、しっかりした手になり、これまで以上の強力な力が出ることになる。
踵を地にしっかり着くとは、踵の縦の動きである。これまでの踵からつかうとは、踵→小指球→母指球の横の動きである。
つまり、踵は横の動きだけでは不十分であり、縦の動きも必要だということになる。やはり合気道は十字道なのである。