『NHK 街角ピアノ ハラミちゃん In パリ』というテレビ番組を見た。ハラミちゃんの素晴らしいピアノ演奏(写真)に感動しただけでなく、いろいろなことを教わった。これまでピアノや他の楽器演奏を聴いてもほとんど感動することはなかったが、今回のピアノには大感動したのである。そしてピアノ、恐らく他の楽器演奏は人を魅了し感動させることが出来ることを実感したのである。
そこで彼女のピアノ演奏に何故それほど魅了されたのかを考えてみて分かった事は、彼女の思いがピアノの演奏になっているのだということである。彼女のその時々の思い、例えば、曲に対する思い、街や人々に対する思い、自分の人生・体験の思い等である。それらの思いに従って、時には激しく、やさしく、ロマンテイックにピアノを思い通りに自在に弾いていたのである。また、彼女の思いをピアノの鍵盤で忠実に現わしたテクニックも素晴らしかったのである。
彼女は言うなれば、自分の思いをピアノ演奏で表していたわけである。ピアノという特技が自分の思いを伝えていたわけである。
ピアノだけでなく、絵画、書、書籍等などの特技を持った人はいる。確かに、それらの特技で評価される人と余り評価されない人が出る。その分かれ目の一つに、どれだけ自分の思いをその作品に伝えているかということだと思った。例えば、ゴッホやピカソの絵は、その中に誰もが激しい思いが感じられる。テクニック的にだけ優れていても人は感動しないものである。
「特技とは自分の思いを伝える技」とした。特技は上記で一寸説明したので、後の「技」を説明する。二つの意味があると考える。一つはテクニックという意味、もう一つは、方法、道という意味である。これから、「特技とは自分の思いを伝えるテクニック」又は「特技とは自分の思いを伝える方法(道)」となる。
合気道を修業している人の特技は合気道であるから、思いを合気道のテクニック(技術)と方法によって伝えられるし、伝えていかなければならないことになる。思いがないとか、思いが伝わらなければ思いがない自動演奏ピアノのようなもので、正確だが人間味、温かみのない合気道になってしまう。
思いを伝えるためには、しっかりした思いを持たなければならない。何を目標に稽古をしているかという思いである。人それぞれ違うだろうが、私の場合は、これまでも言って来た「宇宙との一体化」と「地上楽園建設への生成化育」である。この思いが相対稽古の相手に伝わるように修業を続けているわけである。
更に欲を言えば、相対稽古で相手に接しなくとも、そばにいるだけでその私の思いが周りの人達に伝わるようになればいいと願っている。大先生はそうであった。思いが伝わり、それに共感、賛同してもらえれば、その輪がどんどん広がり、合気道が目指す地上天国建設に近づくのではないかと思っている。
先ずは、合気道家がその思いを技に表していきたいものである。