前回は「地上楽園をつくる」という題で、これからの合気道修業は地上楽園建設のために頑張らなければならないと記した。そしてそのためには後進を育成しなければならないとも書いた。しかし、後進の育成と更なる合気道の発展は基本であり大事であるが、これでは地上楽園建設には不十分である。何故ならば、合気道をやっていない部外者が含まれていないからである。「涅槃図」にあるように、万人の楽園でなければならないのである。鳥獣、植物はともかく、合気道をやらない人たちや万有万物にも楽しい世を過ごしてもらうようにしなければならないという事である。しかし、これは容易ではないだろう。何故ならば、これまでの武道は一般社会や一般の人々との直接の接触や交流がほとんどなかったからである。言うなれば、一歩引いて見られていたからである。更に、鳥獣、植物なども合気道など知らないはずである。
そこで合気道に直接関係のない方々に、どうすれば地上楽園で楽しんでもらえるかを考えてみた。それは合気道の知恵を与え、知ってもらう事ではないかと思う。合気道をやっていなければ気がつかなかったり、思いもつかない知恵を知ってもらうのである。合気道で知恵を身に着けた稽古人達が、機会ある毎に門外漢の人たちに教えればいい。その知恵を知った人たちは、それまで抱えて悩んでいた問題が解決し、また、普段の生活に戻れたり、新たな生き方ができるようになるはずである。地上楽園への入り口に入ったか近づいたことになるだろう。因みに、人以外には合気道で培う“愛“を与え、”愛“で接すればいいと考える。要は、仲よくなる、友達、家族になることである。
それでは、人助け、特に、高齢者の人助けに、どのような知恵が合気道にはあるのかということになる。己自身の体験で紹介する。
人によって多少の差はあるようだが、ある程度の年になると体調が狂ってきて、それまでのように身体が働いてくれなくなる。そこで一般的には、体操をしたり、万歩計をもって歩いたり、サムプリメントを飲んだりして何とかしようとする。しかし、私が見る限り、あまり効果があるとは思えない。一時的な効果はあるようだが、長続きしないこともあっていい結果が出ないのだと思う。
効果がない、長続きしないのは人為的で、不自然だからだと思う。若い内は、人為的、恣意的でもいいが、年を取ったらそれは通用しなくなるのである。ではどうすればいいのかと言うと、合気道で云う宇宙との一体化であり、宇宙、自然と一緒に、宇宙自然に合わせて心身をつかい、鍛え、改善するのである。宇宙自然と仲よくなり、仲よく暮らすことである。
私の場合も高齢になるといろいろな健康上の問題が出てきていた。武道をやっていなければ病院に行ったり、入院していたはずである。そのような問題を合気道の教え・知恵で解決してきたのでそれを記すが、門外漢の高齢者にも参考になるはずである。