【第958回】 足を鍛える

これまで手は鍛えて来たし、手のつかい方も研究してきた。初心者には手は腹と結び、腹で手をつかうように言っているが、これだけでも技がかわってしまう。手のつかい方は法則に則ってつかわなければならないということである。
だが、これまで足のつかい方は手のように深く探究していなかった。その原因を考えてみると。手を上手くつかえば技が掛かっていたことにあったようだ。しかし、最近は相手共々力一杯の稽古をするようになり、手だけでは十分な力が出ない事を実感するようになった。手を腹と結んで、腹で手をつかうだけでは不十分なのである。そして更なる力を出すためには、足をつかわなければならないことがはっきりしたのである。

足をどのようにつかうかは、手のつかい方と同じと考えればいいだろう。
まず、足と腹(正確にな腰腹)を結び腹で足をつかうことである。それが腹→足→手の動きになるわけである。また、技を掛ける際は足→足→手となるわけだから、腹と足と一緒、つまり腹と足が結ぶ事になる。

次に足は手同様に各関節で別れ、働くようにできている。股関節―膝関節―足首で、その間に太ももーももがある。
縦の足と横の足がある。縦の足とは地に対して縦、つまり、足底から股関節の縦軸の足である。横は、縦軸の足、つまり地に対して横である。横の足は、左右の足が交互に動く足である。

足も手と同様に十字につかわなければならないが、足も手と同様、縦の十字と横の十字がある。足の横の十字は腹の十字でつくる。腹が十字に返るから腹と結んでいる足も十字に返るわけである。
また、手のように縦の十字もある。腰(股関節)、膝、足首での縦方向への十字の返りである。
足には体を十字に返す更なる箇所がある。体を十字に返す支点となる三か所である。踵―小指球―母指球(親指のつけ根)である。特に、母指球は体と技が切れずに動くために大事な箇所である。

足も布斗麻邇御霊と“あおうえい”でつかわなければならない。“あ”“お”で天地を結び、“う”で腹と結んだ足を息陰陽で出し、“え”で相手を導く。
これで布斗麻邇御霊も言霊“あおうえい”で体も体のすべての部位をつかわなければならないことがわかる。

手は息陰陽水火でつかわなければならないが、足も息陰陽水火でつかわなければならない。息を引いて足を上げ、息を吐いて足を地に下すのである。また、息を吐いて水、息を引いて火と連動する。人は本来これで歩いている。
更に、手では息と手を陰で引くことによって気が体の表に流れ、体の表に載る。足の場合も、息と足を陰に引くことによって気が腰、背中の体の表に流れるようになる。息を引くと体(手、足)は横に拡がり膨れる。

そこで手と足の関係を確認してみたいと思う。
まず、手と腹、足と腹は結んでいるから、腹をつかうことによって手と足が動く。よって手と足も結んでいる事になる。つまり、腹と手と足が結ぶ三位一体ということになるわけである。技をつかう際はこの三位一体にならなければならないということである。
また、息陰陽で手足をつかうから、手と足は息を引くと手足は広がり(膨れ)陰に引き、息を吐くと手足は陽に出る。手先と足先は同方向に出る。

足を鍛えるとは、足も宇宙の営みに則ってつかうということである。ただ、走ったり、スクワットなどで鍛える事ではない。故に、息陰陽水火、布斗麻邇御霊等々を身に着けておかなければならない。息陰陽水火や布斗麻邇御霊などが身についていなければ、足を鍛えることによって身につけて行けばいい。
いずれにしても、足を上手くつかえるようになったお陰で、これまでにない力が出るようになったのは紛れもない。足も鍛えよう。これが技は足で掛けるという事だということがわかる。