【第953回】 片手取り呼吸法を稽古するから、片手取り呼吸法で稽古するに

これまで何度も書いてきたように、自主稽古では毎回、出来るだけ片手取り呼吸法を稽古するようにしている。その理由は、片手取り呼吸法は好きだという事もあるが、有川先生の一言の教えである。先生は合気道の技は呼吸法の出来る程度にしか出来ないと言われていたことである。先生も稽古は片手取り呼吸法から始められ、坐技呼吸法で終わられていた。時には、片手取り呼吸法に代えて諸手取呼吸法や両手取呼吸法もやられた。
故に私は、片手取り呼吸法を真面目に20、30年稽古している事になる。お陰で大分力、所謂、呼吸力がついた。魄を下に気が上になるような気の力も出るようになった。相手をくっつけ、そして凝結させ相手と一体化する感覚を得ることができるようになった。
片手取り呼吸法がレベルアップすると不思議と諸手取呼吸法も坐技呼吸法のレベルアップする。更に、一教、二教や入身投げ、小手返し等々の技のレベルもアップしたのである。有川先生が言われた通り、呼吸法(主に、片手取り呼吸法)の程度に技がつかえるようになったわけである。

最近は難解な法則の出会いが多くなった。『武産合気』『合気神髄』を繰り返し読んでいる。そこに記されている法則を技に取り入れている。合気道の技は宇宙の法則に則っているからである。これまでの法則は頭で理解することができていたようだが、最近の法則は頭だけでは理解出来ない。体と技で試し実験しなければわからない。
その実験を慣れ親しんでいる片手取り呼吸法でやるのである。思い返してみると、その実験は無意識の内に片手取り呼吸法で以前からやっていた。故に。片手取り呼吸法は最適な実験の場であると確信できるのである。
例えば、今の難解の法則は「息陰陽水火」であるが、片手取り呼吸法での技づかいの中でやるのが会得しやすいと考えている。因みに、これまで片手取り呼吸法のお蔭で解明できた最難関は布斗麻邇御霊であった。片手取り呼吸法が十分に身についていなければ布斗麻邇御霊は全然わからなかったはずである。

片手取り呼吸法にはこれまで多くの法則が入っているし、新たな法則を取り込む下地もある。これからも片手取り呼吸法を精進しなければならないが、新たな法則や難解な法則はこの馴染み深い片手取り呼吸法で解決し、身につけて行きたいと考えている。
勿論、人によって違うかもしれない。片手取り呼吸法よりも一教や入身投げでやる方がいいということである。

結論は、これまでは片手取り呼吸法を稽古するから、片手取り呼吸法で稽古するに変わってきたという事である。
これも、有川先生の教えである「呼吸法は大事」という意味であろう。
これからも片手取り呼吸法を引き続き錬磨、精進していくと共に、片手取り呼吸法で新たな法則を実験し、技に取り入れていきたいと思う。