【第952回】 胸をつかう、胸を鍛える

今回のテーマは、「第945回 胸を鍛え、胸をつかう」「第946回 胸で手をつかう」の続きであり、集大成である(と考えている)。第945回と第946回で見つけた理合いと法則で技と体を練ってきて結果であり、新たな理と法則ということである。以前はよく分からなかったり、その重要性に気づかなかったが、それに気づく事ができたこともある。例えば、胸をつかう、胸を鍛える、胸を開く、胸を張るという意味である。

これまでは、胸を開く、張るためには肩甲骨を開くとしてやってきたが、上手く出来ないことを実感した。肩甲骨を動かそうとしても思うようには動かないのである。そして分かった事は、肩甲骨を開き、閉じる動きは胸鎖関節でやらなければならないという事である。胸鎖関節の開閉によって肩甲骨が動き、また、胸が開き、胸が張るのである。つまり、胸をつかうとは胸鎖関節をつかうという事になるわけである。

胸鎖関節により肩甲骨が動くようになると、胸鎖関節から気が肩甲骨、そして上腕、腕、手掌、手先・指先に流れる。これで、手は胸鎖関節から手先までの長い手であるということが実感出来るのである。ということは、手先は胸鎖関節でつかうということになる。手先から先に動かすのではないという事である。
胸鎖関節をどうつかうのかというと、水火と息陰陽である。膨らまし、縮めるのと引く息、吐く息でやるのである。
このためには、胸(胸中)を引く息で満たさなければならない。腹中からの息を胸中で引く息に返るのである。布斗麻邇御霊のである。これで胸鎖関節が開き、肩甲骨が開き・張り、手先まで息(気)が流れる。
これを大先生は次のように教えておられている。
「吐く息はである。引く息はである。腹中にを収め、自己の呼吸によっての上に収めるのです。」(武産合気P.72)

技の錬磨において、このように胸鎖関節をつかい、胸をつかい、胸を鍛えていけばいい。日常生活においても胸は張っていた方がいい。胸がしぼんでいると、不健康に見える。胸が張って元気そうに見えるためには、胸鎖関節が固まらないで緩んでいる必要があるようだ。そして息に合わせて胸鎖関節が自然に動けばいい。