一か月後フランスでの合気道の講習会に行く。20,30年間ほぼ毎年行っていたが、コロナのためにここ3,4年は行っていない。
これまで基本的な事は教えてきたので、合気の体はでき、基本の技や動きは出来ているはずである。
そこで今回は次の次元に入るための稽古をすることにする。
合気の稽古・修業の段階は、顕界→幽界→神界である。これは魄の稽古→気の稽古→魂の稽古でもあるから、魄の稽古の次の気の稽古ということになる。
しかし、誰もがわかっているように気の稽古はそう簡単ではない。魄の稽古の顕界の次元では、先生や他人の目に見える技や手足の動きを真似していけばいいわけだから容易であるが、幽界での気の稽古では、気は目に見えないし、その働きも目に捉えることはできない。
故に、講習会で教えるのは難しいのである。しかしながら講習会の指導者としてはそれを教えなければ先に進めないわけだから何としても、生徒が分かるよう、納得できるように教えなければならない責任がある。
どのように教えればいいのかを考えたが、自分自身のこれまでの体験を再現すればいいだろうし、それしか出来ないだろう。己が気というものを実感し、その力と働きに感動したことを再現させるようにすればいいだろう。気によって相手の手がくっつき、相手は気によって凝結しまう摩訶不思議等である。
そして相手をくっつけてしまったり、凝結させてしまう気はひびき【振動】であること。つまり気は目に見えないが、身体で感じることが出来るということ等を伝えたい。
気を上記のように教えようと思うが、生徒たちは分からないし、出来ないはずである。どんなに技が上手く、強く、頭がよくても、すぐに気をつかうことは無理だと思う。何故ならば、気の稽古に入る前にもう一つやるべき事があると考えるからである。
それは息づかい、呼吸の稽古である。つまり魄の稽古→息づかい・呼吸の稽古→気の稽古・・・となるわけである。息づかいが上手くできなければ気は生まれないし、気で技をつかえるようにならないからである。
息づかい、呼吸は重要であるが、その重要性に気がつかないものである。これが気の稽古に入るのを妨げている最大の要因と考える。
それでは息づかい・呼吸の稽古をどのようにするかである。私の場合はイクムスビの息づかいで体と技をつかう稽古をした。イーと息を吐き、クーで息を引き、ムーで息を吐くで、手先を伸ばし、手先を横に拡げ、手先を更に伸ばすと手先を鍛え、そしてつかった。
息づかいで更に重要なことは、お腹で息をつかうことである。腹中でイクムスビをし、腹中を萎め→膨らまし→萎めるのである。つまり口ではないということである。
この息づかいで技と体をつかうことを教えなければならないということである。これまでは肉体主体で技をつかっていたのを息で肉体と技をつかうようにするわけである。
この息づかいで準備運動をし、片手取り呼吸法、坐技呼吸法で要領を覚えて貰い、他の技、そしてすべての技をこの息づかいでできるようにさせたいと思っている。
そしてこの息づかいが出来れば、次の段階の気の稽古に進めること、気の技がどのような技になるのかを示してやりたいと思う。
息が気にかわってくるのである。故に息づかいが気の稽古の前に必要になるのである。
どのような結果になるか楽しみである。