合気道の修業の目標は宇宙との一体化である。故に宇宙と一体となるように稽古をしている。この合気道の目標を意識して稽古を始めて数年経つと思うが、はじめは自分には無理だろうと思っていたし、人が宇宙との一体化などできるなど信じられなかった。大先生はそれをやられたわけだから、凄い方なのであり、超人的な凄い方だからできたのだろうと思っていた。
しかし、一年ほど前に偶然、布斗麻邇御霊に出会った。布斗麻邇御霊は宇宙を創造し、生成化育している御霊という。宇宙の営みである。
この布斗麻邇御霊を古事記で解釈したのがフトマニ古事記であり、「このフトマニ古事記によって、技を生み出していかなければなりません」と大先生は教えておられるのである。宇宙や布斗麻邇御霊が分かろうが、わからなろうが挑戦しなければならない。
この一年ほど、フトマニ古事記で技をつかうように頑張ってきた。まずは自分の好きな片手取り呼吸法と正面打ち一教で試してきた。
はじめは、布斗麻邇御霊の意味と技へのつかい方が皆目見当がつかなかった。今は大分理解できるし、技につかえるようになった。どうして分かったのかだが、その答えは簡単である。それは大先生の教えを一つづつ身につけてきたからである。例えば、○は吐く息で水、□は引く息で火、━と|で十、伊邪那岐伊邪那美神などと『合気神髄』『武産合気』で教えておられる。
最近は、布斗麻邇御霊で技をつかわないといい技が生まれない事がわかってくる。技の途中で上手くいかない場合は、この布斗麻邇御霊が十分に働いていないのである。故に、上手くいかなかった箇所の布斗麻邇御霊に十分働いてもらうようにすればいいことになる。例えば、諸手取呼吸法でしっかり掴まれた手が抑えられて動かなくなるのは、やの息づかいや気力が不十分であったり、が生まれないからからである。
他の技でも試したが、すべて布斗麻邇御霊でやらなければならないようだということがわかった。合気道の技は宇宙の営みを形にしたもので、宇宙の法則に則っているということはこの事だろう。また、合気道の技だけではなく、四股踏みや剣の素振りも布斗麻邇御霊である。
布斗麻邇御霊をつかわないと技は生まれないということであるが、それでは布斗麻邇御霊の御霊にはどのような働き、力があるのか。この答えを大先生は、言霊を発することによって現象界において何らかの変化を生じせしめるし、言霊の響きによって宇宙万物が生成されたと言われる。それに習うことが合気の道であるという。 合気道では宇宙と一体となることによって、空間に満ちている霊的力を自己の中に呼び込むことを行なうのであり、そのためには言霊の響きを使わなければならないとされる。響きの呼応によって高いレベルの気を呼び込むのだというと言われている。
ようするに、布斗麻邇御霊に習うことこそが宇宙と一体となるということになるだろう。
また、宇宙の営みである布斗麻邇御霊を自己に入れ、それを自己のうちにあるを感得するも宇宙との一体化である。これが真の合気道の目標であり、これを大先生は、「合気道は宇宙のいとなみが自己のうちにあるのを観得するのが真の合気道なのであります。」(武産合気 P.48)と教えておられるわけである。
宇宙はそんなに遠くにあるものでも、異質なものではないということである。大先生は、「宇宙と人体とは同じものである。これを知らなければ合気はわからない。なぜなら合気は宇宙のすべての動きより出来ているからであります。(武産合気P.68)」と教えておられるのである。