【第889回】 手刀を鍛える

これまで手のつかい方を研究してきた。合気道の技は手で掛けるので、手が上手く働いてくれなければならないからである。その手のいろいろな働きの内、最近の研究結果は親指を無暗に動かさず、親指を体(支点)として手の平を用としてつかわなければならないということであった。片手取り呼吸法、諸手取呼吸法、坐技呼吸法、正面打ち一教が上手く出来るためには必須であると書いた。
今回はこれに関係し、そしてこの延長にあるものである。体の親指に対する用の部位の更なる重要性とその働きが明確にわかってきたのである。

それは親指と対照にある「手刀」である。「第460回 狭義の手刀」で書いたように、「手刀」には広義のモノと狭義の手刀があるが、ここでは狭義の手刀である(図)。因みに、広義の手刀は手を小刀、小刀、刀、大刀と刀としてつかう事である。

これまで親指が大事だといってきたのは、手刀に存分働いてもらうために大事だったわけである。
手刀が働いてくれると、○手刀の先端が刃となり、相手を手刀で常に切る状態になる。○相手(の手)を常にこちらの腹の下に置く状態をつくる。○常に己の腰腹の力がつかえる。○魄の力を気に返ることが出来るようになる。○よって、気で技を掛けられるようになる等が分かったのである。

しかし、手刀をつかうのは容易ではない。そもそも手刀をつかう事を意識しないものである。手刀をつかえるようになって初めてその重要さに気づくことができるようだからである。
また、手刀が働くためには、次のように手をつかわなければならないからである。○親指を体(支点)とし、手刀を用にし、手の平を面で動かす ○腰腹から気を手の平に満たし、親指は指先の方向の縦に伸ばすと、手刀が自然と内や外に返る。○この親指と手刀の返りで円の動きをつくり、技を掛ける。
○親指と手刀が十分気で満たされ、手先が張るためには、手の平が手鏡になるように返さなければならない。○手先・手の平は縦⇒横⇒縦の縦の十字でつかう。○息はイクムスビでやる等。

手刀は相対稽古の技づかいで鍛えなければならないが、身につけやすい技(形)とそうでない技がある。手刀の働きが分かり、それを鍛えるのに適していると思うのは、後ろ両手取りであろう。それに続くのが、片手取り呼吸法、そして坐技呼吸法が上手く出来るようになれば手刀がつかえるようになったことになるように思う。
手刀も鍛えなければならないということである。