【第885回】 歩く事が大事

自分が考えていた事を裏付けてくれる本に出合った。『病気の9割は歩くだけで治る!』(長尾和宏著 山と渓谷社)である。
以前から、日本人は運動不足であり、そこからいろいろな病気や体の障害がもたらされているから、もっと運動をしなければならないと思っていた。運動すればいいが、誰もが若者が挑戦しているような激しい運動などできるわけがないから、誰でも気軽に、そして無理なく続けられる運動をすることである。それは歩くことである考える。
ということは、現代人は十分に歩いていないということである。十分に歩かない、つまり運動しないから、歩けなくなったり、体が動かなくなったり、膝や腰を痛めたり、病原菌に冒されやすくなったり、十分な睡眠が取れなくなったり等などに悩まされると思う。

実際、街中でまともに歩けない人や杖をついて歩く人をどんどん多く見るようになった。高齢者だけではなく、中年や若い人にも広がっているのである。老若男女の多くが運動靴(スニーカー)を履いているが、よく歩かないから足の筋肉が衰え、足の機能が衰えているのをカバーするためだと見ている。自分でやるべきことを他(スニーカー)に責任転嫁しているとしか思えない。
この責任転嫁は他にもある。膝や腰が痛いからと薬を飲んだり、サプリメントを摂ったりする。こんな責任転嫁をしていると足の機能だけでなく、体の機能は低下するはずである。

高齢者になると、健康で過ごすためには運動が重要になる。勿論、若い頃のような激しい運動ではなく、無理なく、長続きできる運動である。私の場合は合気道をやっている。合気道は激しい運動にもなるが、自分の状態に合った運動にもなる。早くも遅くも動けるし、強くも弱くも力を出す事ができる。
しかし、年を取って来て実感したのは、毎週各一時間3日の稽古では十分な稽古にはなっていないということである。若い頃は、稽古を毎日2,3時間やっていたので、稽古をしているだけで十分な運動になっていたわけだが、年を取っている今は、若い頃のように激しく、そして長時間稽古をすることは出来ない。その運動不足分をカバーする事が必要になるわけである。それが歩く事であると考えて実行している。

『病気の9割は歩くだけで治る!』の著者である長尾和宏先生は、自分のクリニックで患者を診ているが、コロナでステイホームにあった患者さんは、筋肉が剥げ落ち、背中が丸くなり、2年しか経っていないのに10年ぐらい経ったのような別人になっている人が沢山いたそうだ。これは運動不足、歩行不足が原因であるという。先生は、コロナ感染よりも、「ステイホーム症候群」の方が数百倍多く、また、なかには「ステイホーム症候群」のほうで命を落とす人がいたという。
長尾先生は、運動不足、歩行不足は筋肉の衰えだけでなく、骨も衰えさせると次のように言っている。「歩けば、重力と振動という二つの刺激が骨に伝わります。その刺激が、骨の生まれ変わりを促し、骨を丈夫にするのです。」
この他に長尾先生は歩く事の意義、効果をいろいろ云われているから、その幾つかを抜粋して記す。

歩く事の大事さを科学的に確認したこと、また歩くことは考えていたより大事である事がわかった。これからも歩くことを大事にしていきたいと思った。