【第880回】 丸く円を描くために
前々回の「第878回 丸く円を描いて技を生み出す」で、技は丸く円を描いて生み出さなければならないと記した。これで片手取り呼吸法、諸手取呼吸法だけでなく、片手取り四方投げ、片手取りからの様々な呼吸投げ、正面打ち入身投げ等々試したが、丸く円を描くと上手くいくが、丸く円を描かないと直線的な動きとなり、相手との結びが切れたり、相手とぶつかったり、弾いたりしてしまうのを確認した。
この丸く円を描いて技を生み出すことは法則であるから、これで技を生み出さなければならないが、丸く円を描くことは難しいようなのである。技を掛ける手が丸く円を描かないのである。稽古仲間がやるのだが、不完全な丸い円になってしまうのである。
そこで分かった事は、やるべき事をやらないと丸く円を描くことはできないということである。やるべき事、つまり技を生み出す要素である。その要素には次のようなものがあるようである。
- 心の丸である。「心を丸く体三面に開く」とあるように、心を丸くは心を空、皆空にすることである。相手をやっつけようとか決めてやろうなどと思わない事である。
- 手から先に動かさないことである。手は腹⇒足⇒手の順でつかうのが法則であるから、この法則を破れば技にならない。手から先に動かせば丸い円はできないのである。そのためには腹、そして足で手をつかうようにしなければならない。
- 体の裏でなく体の表をつかわないと丸い円はできない。体の裏とは体の腹と胸側であり、体の表とは体の背中と腰側である。裏の腹で手を動かし丸い円を描こうとしても思うような形と力強い円はできないのである。
- 丸い円は手の平でつくるが、意外と難しい。手の親指を体(支点)として手の平を用に丸く円くつかわなければならないのである。親指が先に動いたり、弱ければ円にならない。この親指と手の平のつかい方は後ろ両手取で身につけるのがいいだろう。
- 息づかいも大事である。息で体をつかうのである。まずは、イクムスビのイと息を吐き、クーで息を引き、ムーで息を吐くのに合わせて体をつかうのである。体だけの動きは直線的で切れてしまうが、息での動きはそれがない。勿論、気や魂の動きになれば更にいい。
- 最後に、腕力ではなく気力で手をつかうことである。腕力、所謂、腕の 力では丸い円はつくれない。腹からの力(実際は、この力は体の表に流す)。これは気の力である。相手の手や体に密着し、どの円の箇所でも己の体重が相手に掛かるのである。
丸く円を描いて技を生み出すためには、上記のやるべき事をやらなければならない。一つでも欠ければ丸い円は描けないし、技にならないのである。一度にすべてをやるのは難しい場合は、一つ一つ身につけるようにすればいい。しかし、これらの一つ一つの要素を身につけるのも容易ではないはずである。それはこれまでの論文に書いてきた通りである。
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