【第875回】 水火陰陽

前回の「第874回 天地水火陰陽」で技と体をつかって稽古をしていくと、水火陰陽について新たな事がわかったので記することにする。

天地については分かってきたし、技に表すことができたが、水火陰陽が不明瞭であり、実際に技にどうつかえばいいのかが不明確だったので研究した。
そして次の曖昧、不明確な件を解明した。
まず、イキについてである。
大先生は、「合気道は、地の呼吸と天の呼吸を頂いてこのイキによって、つまり陰陽をこしらえ、陰陽と陰陽とを組んで・・・技を生み出してゆく」(武産合気P.111)と言われているわけだが、これは「イキによって陰陽をこしらえる」、「イキによってこしらえられた陰陽と陰陽とを組んで技を生み出してゆく」と要約できる。ここからイキで陰陽をつくるとはどういうことなのかを考えなければならない。陰とは働いていない部・側、陽は働いている部・側ということである。吐くイキは陽であり、引くイキは陰である。例えば、相手を投げたり倒したりする時のイキは陽で、その前の引いているイキは陰となる。
しかし、それに続く「陰陽と陰陽とを組んで技を生み出す」である。これは陰陽をこしらえて繰り返しつかうのではなく、その陰陽と他の陰陽を組み合わせるということである。
前者のイキは人が日常的にやっている腹式呼吸と胸式呼吸であり、水火の呼吸、布斗麻邇御霊の○□である。後者のイキは腹中の縦横の気の働き(━、|)と感得する。この前者と後者の二つのイキが組み合って(等)技を生まなければならないという事である。
例えば、片手取り呼吸法では、うぶすの社の構えから、息を吐きながら手を出が同時に腹中を拡げ(横)気を満たす。これが息を吐く陽と腹に気を引き満たす陰の組み合いである。更に息を吐き続けながら、腹中に満ちた気を、地を踏みしめて縦に返す。これで陽と陽の組み合わせに変わる。
今度は息を引き乍ら、胸に息が入り、また胸中に気が満ちる。陰と陰の組み合わせに変わる。そして胸の息と胸中の気を出して技を収める。陽と陽の組み合わせである。よって片手取り呼吸法の陰陽の組み合わせは、陽と陰→陽と陽→陰と陽→陰と陰→陽と陽となる。
片手取り呼吸法だけでなく正面打ち一教もこの水火陰陽でできるし、やらなければならないと確信した。これは法則、宇宙の法則であるということであある。

さらに、大先生は「火水というのは体(たい)であり、イキとは用(よう)であります」(武産合気P108)と教えておられる。これも技をつかう上では大事な事である。
この教えから二つの事がわかる。
一つは、水火(火水)は体であり、イキは用であるという事は、体は動作の中心であり、支点として動かさない、つかわないということである。動かすのは用のイキである。ということは、腹式や胸式の水火(息づかい)で技をつかっては駄目だという事である。相手を制し、導くのは腹中、胸中のイキである。相手を弾き飛ばしたり、逃げられたりするのはここにも原因があるわけである。
二つ目は、上記に関連して、水火(火水)が腹式呼吸と胸式呼吸の吐く、吸うの息づかいであり、イキが腹中と胸中の気の働きということである。

つまり、体と用の教えである。この重要な教えを技に取り入れていかなければならないということである。

天地水火陰陽と体・用の教えに従えば、技はますます昇華するようだ。