【第872回】 仙骨の活用

これまでにも書いてきたように、仙骨を意識して技と体をつかっているが、更なる仙骨の重要性と更なる仙骨の活用をしなければならない事がわかってきた。
人の体を崩れないように支えているもとは関節であるが、合気道の技でその体をつかう場合は、お互いに固着している関節の接着を解除しなければならない。接着したままで体をつかえば、体の部位を棒のようにつかうことになり、関節の接合部での縦横の十字につかう事ができなるから、技にならないことになるわけである。
この普段はしっかり繋がっている関節の接着を解除しなければならないが、その主な部位には、手先と腕を結んでいる手首、腕と二の腕(尺骨・橈骨)の肘、二の腕と肩甲骨の肩、足先ともも・脛の足首、もも(脛骨・腓骨)と太もも(大腿骨)の膝、太ももと股関節、背骨と股関節等がある。

これらの接着した関節をバラし、独立して体をつかわなければ技にならない。例えば、交差取り二教で技が決まらないのは、手首を支点として手先だけが独立して動かなければならないが、手先と腕が繋がって動いているからである。

体をバラしてつかわないといい技は生まれないが、それに気づく事、そしてバラバラにしてつかうのは難しいようだ。どうしても、日常生活での体のつかい方をしてしまうのである。
最近、一番気になるのは、道場で技の稽古に入る前の柔軟運動・体操である。特に、腰を床につけての開脚の柔軟運動である。上体を床に落とす運動である。若い女性や若者たちは容易にやっているが、古い稽古人や高齢者は上体が突っ張ってままの状態で、ほとんど床に落ちない。それでもこの状態から何とかしようと、力を込めて上体を床につけようとするか、上体はそのままで、落ちるのは頭だけである。これでは何の稽古にもならないし、腰を痛めることになるから止めなければならない。しかし、問題はどうすればいいのかが分からない事である。

この問題を解決してくれるのは仙骨である。開脚して上体を床に落とすと、体が突っ張ってそれ以上下に行かなくなるところがあるが、そこで仙骨を緩めるのである。緩めるためには仙骨に息(気)を入れればいい。
仙骨が緩むと背骨と股関節のロックが外れる。骨同士のロックが解除し、筋肉の繋がりに変わるわけである。骨はいくら力を入れて頑張っても柔軟にはならないが、筋肉ならやればやるほど柔軟になる。これが柔軟運動の意味である。ロックが掛かった状態では幾らやっても意味がないし、体を壊すことになるのである。
尚、準備運動として、開脚だけでなく、手首、肘、肩、首などの柔軟運動がるあるが、すべて仙骨をつかえばいい。イクムスビの息に合わせて仙骨をつかえば、関節は緩み、当該部位をばらばらに、つまり独立して鍛えることができるのである。

準備運動で仙骨がつかえるようになれば、技も仙骨でつかえるようになるだろう。仙骨をつかえれば、神を表に出し、気や魂が働く技づかいになるはずである。