【第870回】 二の腕を鍛える

合気道の相対稽古で技を掛け合い、技を練っていくが、なかなか思うように技は効かないモノである。相手にこちらの力が伝わらなかったり、ぶつかったりして、相手が倒れなかったり、決まらなかったりする。
上手く技が効かない要因は沢山ある。極端に言えば、その要因のひとつでも残っていれば技は効かない事になる。その要因(原因)を見つけ、一つ一つ解決していかなければならない。地道な仕事である。

合気道の技は手で掛けるので手は重要であると書いてきたし、手を大事に稽古をしてきた。名刀のように真っすぐで、折れ曲がらず、強靭であるように手をつくり、手をつかうということである。そしてこの手が出来ていなければ技はつかえないと確信している。
しかし、最近、名刀だと思っていた手が、まだ十分に名刀になっていないことに気づかされたのである。何かが欠けているのである。そのため手が名刀のように働いてくれないのである。

欠けている箇所は“二の腕”(写真)である。この二の腕が十分に働かず、手先に力が来ないのである。

手首から手先、肘から手先までは大分鍛えることができたので、力を出し、技をつかう事ができるが、肘から肩の二の腕ではそれが出来ていなかったのである。剣の素ぶりでそれがよく分かる。この二の腕は技を掛ける際につかうのが難しく、つかいづらいということで、あまりつかわれないということになるのだろう。一般社会の生活でも、年齢を重ねると特に女性は二の腕のたるみが気になるようになると言われるように、ここを余りつかっていないということである。

それでは、どうすればこの二の腕を上手くつかえることができるかということになる。それは前回『第869回 腹から仙骨へ』でも書いたように、仙骨をつかい、体の表に神(気)を出すことである。体の表(背側)に気が出ると胸鎖関節、肩、二の腕、肘、腕、手先と気が流れ、二の腕は気で満ち、気の力が生まれるのである。これで正面打ち一教をやれば盤石な剛の技になるし、そこから二教、三教に自由に、盤石に変換することができるようになる。
これまでは腹を中心に手をつかっていたため二の腕には気が集まらなかったのである。故に、二の腕は十分に働いてくれなかったわけである。

二の腕を鍛えるには、前出しの正面打ち一教でも、二教でもいいが、特に、三教がいいようだ。三教は二の腕を鍛えることが主眼の技であると考える。特に、三教は受けをしっかり取れば二の腕は鍛えられる。また、剣の素ぶりもいい。二の腕を意識して、勿論、仙骨での体の表で振らなければならない。