【第867回】 結びの糸を張り続ける

合気道は技を練って精進していくが、なかなか思うようにはいかない。技が効かず相手にぶつかったり、頑張られたり、また逃げられたりしてしまう。自分もまだまだだが、後輩の技づかいを見ているとその技が効かない理由・原因が見えてきたので、直近で見えたその理由を記してみる。技が効くようになるためには、この効かない理由・原因を改めればいい事になる。

その上手くいかない理由は、相手との結びを切ってしまうことである。技のどこかで相手との結びが切れてしまい、そこで相手は自由になるので、場合によってはそこで頑張ったり、反撃することになる。また、結びの切れた動きの技の受け身は取りずらく、こちらが頑張ったり、意地悪しているように見えるだろうが実際に取れないのである。逆に言えば、相手に頑張られたり、反撃されたとしたら、結びが切れたということになる。

技を掛ける際は、“結びを切らない“ことが肝要ということである。この“結びを切らない“を合気道的に表現するとしたら”結びの糸を張り続ける“といことになるだろう。相手が掴んだり、打ってくる手との結びを張り続けるようにするのである。相手の手が弛まないようにしなければならないのである。

それではこの“結びを切らない“”結びの糸を張り続ける“ためにはどうすればいいかということになる。相手に対して“結びを切らない“ようにお願いすることはできないから、自分が何とかしなければならない事になる。自分の息と体づかいでやるのである。
自分の息づかいと体づかいが理に叶っていなければ、自分自身の動きが切れてしまうから、まずは自分の動きが切れないように修練しなければならない。
それではどうすれば体、技の動きが切れてしまうのかを考えなければならないだろう。これまでの研究から、動きが切れるのは、息を吐き切った時、体の動きと息が合わない時等である。
初心者に見られるのは、手足をめちゃくちゃに動かしている姿だが、これでは手足の動は細切れ上に切れてしまう。息はすぐに、はーはーぜーぜーとしなってしまう。

“結びを切らない“ようにするには、まず息で体と技をつかう事だと考える。息で体を鍛え、息で技をつかうのである。
先ずはじめはイクムスビで手を縦、横、縦と真っすぐで強靱な名刀のような手をつくり、その名刀の手で技をつかうようにする事である。
また、技もイクムスビの吐いて、吸って、吐くの息でつかうのである。この手と息づかいで相手との結びの切れは相当なくなるはずである。

次は、布斗麻邇御霊の水火の息づかいである。布斗麻邇御霊の形と水火の息づかいで技と体をつかうのである。
また、この布斗麻邇御霊の水火の息づかいに加えて“あおうえい”親音で体と技をつかえば更に効果がある。
理想の息づかいは阿吽の呼吸といわれるが、阿吽の呼吸は結びの糸を張り続け、切れることがないことにも関係があるだろう。

これに加えて、最近分かったことは、“結びを切らない”、“結びの糸を張り続ける”ためには、体の表をつかう事である。体の背中・腰側の表に気を巡らせ、その気をつかう事である。この気が相手と結ぶ糸となり、気と相手と結び、その気で相手を制し、誘導するようになるのである。このための最良の稽古が後ろ両肩取りだろう。後ろ両肩取りで“結びを切らない”、“結びの糸を張り続ける”を実感できるはずである。