【第867回】 一挙手一投足も天地の気で

前回の「第866回 手鏡に写し取る」で「一挙手一投足にも法則があるということである。技と体を陰陽十字や布斗麻邇御霊の息づかいや気でつかう等の法則の他にも法則があるということである。その法則に従わなければ攻撃の相手は納得できないから、体と心で反抗してきて、動けなくなったり返されてしまうことになる。
実は、布斗麻邇御霊から割別れる気があり、一挙手一投足などはその天地の気をつかえばいいのだが、それは複雑になるので別の回にする。」と書いたので、一挙手一投足も天地の気でやればいいということを研究してみたいと思う。

合気道の技(形)は布斗麻邇御霊とあおうえい五声の言霊でつかうのが基本である。しかし、合気道の技の錬磨ですべての動きが七つの御霊を必要とするものではない。動きには合気道の基本技(一教、四方投げ等)ではなく、手足をその基本技の一端だけ動かしたり、基本技にはないが剣の動きにある動き等がある。布斗麻邇御霊とは異なり、その一部であるか、異なる動き(気)である。
この気を布斗麻邇御霊から割れ別れたる天地の気という。これを「この形は布斗麻邇御霊より割れ別れたる水火の形なり」と『大本言霊学』(出口王仁三郎)にある。

過って有川定輝が本部道場で技を示されていた折、いつもの受けが先生がお話し中に先生の後ろから突然手刀で打ったのである。我々が先生は打たれるなと思った瞬間に、先生はその手を捌き、一瞬で受けを搦め捕られたのである。受け(外人)が何故とっさに打ったのは分からなかったが、それよりも、何故、有川先生は後ろからの予期せぬ打ちを捌くことができたのかに興味を持ったが、これまでその理由が分からないでいた。
しかし、その答えこそがこの布斗麻邇御霊から割れ別れたる天地の気であったと思うのである。この動き(形)と水火の息づかいによる気によって相手を制したと思うのである。

この動き(形:━|十?等)だけでは、合気道の徒手の基本技でほとんどつかわれないが剣はこの動きでできる。また、その剣の動きを徒手で身につける稽古法を有川先生は創案され、我々に教えて下さっていたのである。第688回で書いた“米の字と突き”の動作である。
― 正面切り下げ・切り上げ、左横面切り下げ・切り上げ、右横面切り下げ・切り上げ、胴きり右・左切り、突き
この動さ(形)の中には、この12の気形のほとんどが含まれるので、この稽古で布斗麻邇御霊より割れ別れたる天地の気を身につけることが出来るだろう。また、これが出来てくると剣がつかえるだろうし、また、抜刀居合もできるようである。そして一挙手一投足もこの天地の気でつかえるようになるはずである。