【第862回】 仙骨が働くために

第859回で「仙骨」について書いた。仙骨は体の重要な部位であり、驚くべく働きがあり、合気道の技づかいには無視できないものである。仙骨を意識して技をつかっていくと、その事をますます実感できるし、更なる事もわかってくる。例えば、仙骨に働いてもらわなければ、気が生まれないし、気が体の表に流れないことである。魄の上、表に魂が来ないのである。ということは、仙骨をつかわなければ魄の稽古を続けなければならない事になるという事である。これは真の合気道を求めている者にとっては重大なことである。

しかし、稽古をやっていくと、この仙骨に働いてもらうのが容易ではないこともわかってくる。仙骨は骨盤の中にある手の平サイズの骨であるが、骨なので筋肉のように自由には動いてくれない。また、この仙骨が働いてくれたとしてもそれを確認するのも難しい。

仙骨が働いてくれているかどうかを知るためには、それを身心で実感することと体の動きと技に現われることだろう。仙骨をつかっての技と体をつかうとそれをつかわないでやるのと全然違うことがわかるはずである。魄と魂の異質の違いがあるためである。

それでは仙骨に働いてもらうためにはどうすればいいのかである。このような新しい問題を解決する方法は、これまでの経験や知識から必要なものを取り出し、組み合わせるしかないだろう。だから、大事と感じたことを一つ一つ身に着け、蓄えておかなければならないわけである。特に、大先生、師範、先輩から教わった事、書籍で得た知識、見聞きした事等々である。
勿論、それらのものは直接問題を解決してくれないだろう。それらの蓄積したものを統合したり、必要なものを組み合わせたり、自分の推測や考えで加工したり、拡大解釈したり、想像したりしなければならないはずである。想像力、感覚力、決断力が大事である。
そこで仙骨を働かせるという事である。これも一般的な方法などないわけだから、自分でつくらなければならないことになり、挑戦ということになる。
まず、大先生は、息は「腹を凹ませた時、吸って吐きながら、腹を膨らませて肛門を締める」ようにつかわなければならないと言われていたという。これは、所謂、“うのみ働き”ということであると考える。うのみ働き”とは“うの言霊のみ働き”であり、この“う”声の言霊が仙骨を働かせるのである。

ここまでは以前にも書いたと思うが、更に仙骨に働いてもらう方法を見つけた。
それは“うの言霊”で体の末端、とりわけ手先を更に伸ばすことである。例えば、片手取り呼吸法で手を出して掴ませたら、そこから手先を更に伸展するのである。だが、ただ伸展しようとしても十分伸展しないし、仙骨も働いてくれない。仙骨が働いてくれるように手先を伸ばすためには、伸ばす方向と十字になっている親指に対して直角に他の指を伸ばせばいい。仙骨と結び、仙骨が働き始め、仙骨から気が体の表(背中側)を巡るのを実感できる。勿論、掴ませた手だけでなく、正面打ちなどの打たせる手に対する手でも同じである。また、剣を振り上げる場合も同じである。
手先、体の末端を伸ばすことで仙骨が働いてくれるのである。
尚、もう一つの体の末端である足については実験中というところである。